はじめに
9月に入ると、暦の上では「単衣(ひとえ)」の季節になります。
けれども実際はまだ残暑が厳しく、夏のような暑さが続く日も少なくありません。
「9月って何を着ればいいの?」
「夏物はもう終わり?単衣を着るにはまだ暑すぎる…」
そんなふうに迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
今回は、9月におすすめの着物選びと、快適に過ごしながら秋らしさを取り入れるコツをご紹介します。

9月の気候と着物のルール
着物の「しきたり」では、6月と9月が単衣の季節。
しかし、現代の日本では気温が高く、9月でも35℃近い日が続くこともあります。
昔ながらの決まりを大切にしつつも、無理をして体調を崩してしまっては本末転倒。
「季節感を大切にしつつ、体感と快適さを優先する」
これが9月の着物選びのポイントです。
単衣着物の選び方
9月に活躍するのは、薄手の紬や小紋、色無地などの単衣仕立ての着物。
真夏に比べて、少し落ち着いた色合いを選ぶと秋らしさが出ます。
- 明るいブルーや水色から → グレーがかったブルーや藍色へ
- 真っ白から→ 生成りやベージュ系へ
- 鮮やかなピンクから→ ボルドーやくすみピンクへ
また、9月前半はまだ暑い日が多いので、透け感の少ない夏着物を「単衣風」に着るのもOK。
季節の橋渡しとして、無理なく楽しめます。
麻の着物は8月までとされていましたが、色目が秋色なので構わず着ています。もちろん、襦袢も麻です。

長襦袢・帯・小物での工夫
長襦袢
- 9月前半:絽や麻襦袢を続けても違和感なし。
- 9月後半:生地がシボだった単衣用の長襦袢に切り替えると季節感が出る。
礼装でないなら、最近の暑さを考えると、9月後半でも麻襦袢を着て差し支えありません。


結城縮は、強撚糸の技術による細かなシボが特徴の、さらっと軽やかな着心地の伝統的な手織り着物生地で、夏から初秋にかけての単衣着物として愛用されます。結城紬の上質さを保ちつつ涼やかさを合わせ持つ非常に希少な織物です。
銀座きもの青木
帯
- 夏の羅や麻帯から → 帯芯の入っていない九寸名古屋帯、博多帯にチェンジ。
- 色はベージュ・グレー・深緑などを選ぶと秋らしさがぐっと増します。

矛盾するようですが、最近の暑さを考えると、カジュアルな場面ではざっくりとした織りの夏帯でも、秋らしい色合いであれば締めても大丈夫です。
長井縮は山形県長井市の伝統的な絣技法と縮み技法を組み合わせて織られた織物で、複雑な絣柄と涼やかな肌触りが特徴です。手間がかかる染色・織りの技術が詰まった希少な高級紬着物生地で、和装愛好家に大変人気があります。
wa-kinuya
苧の帯とは:苧の帯は強度が高く、涼感があり通気性に優れているため、特に夏の着物の帯として重宝されます。
小物
- 帯揚げ・帯締めで「秋」をプラス。
例:からし色、えんじ色、こげ茶、オリーブグリーン。 - 小物で少し季節を先取りするだけで、全体が落ち着いて見えます。

牛首紬は約800年の歴史を持つ石川県の伝統的な絹織物で、特殊な玉繭を使った強靭で独特の風合いの紬として愛されています。熟練職人による手作業で一貫生産され、ひとえ仕立てにするなど和装愛好家から高い評価を受ける希少な高級紬です。
残暑を快適に過ごす工夫
着物で一番つらいのはやはり暑さ。
9月はまだまだ汗をかきやすい季節なので、肌に触れる部分の工夫が欠かせません。
せめて、着姿は秋らしく、下に着るものは真夏仕様で涼しさを確保です!
- 吸汗性のある和装肌着やステテコ、着付け道具を活用する
綿のステテコ
メッシュの着付け道具
贅沢ですが夏物も正絹があります。年中使えます。
メッシュの小物は使ってみたら明らかに通気性が良いので年中愛用しています。

補整兼汗取り肌着
くノ一麻子は、肌襦袢と補整、汗取りを兼ね備えた一体型肌着。
着崩れも軽減する新発想の補整肌着として季節を問わず愛用しています。
今までの中で一番効果があると感じてる汗取り肌着です。高価ですが、着物に汗が移る心配がなくなって、汗取り費用が浮きました。
補正効果もあるので、この一枚でOK、麻綿内蔵で涼しさを感じられます。
襦袢のしたにこれを着てステテコを履けば内股の汗も気になりません。

9月におすすめのコーデ例
1. 夏着物+秋色帯
9月上旬
は透け感の少ない夏着物に、ベージュ系の帯を合わせれば、一気に9月らしい装いに。

2. 木綿着物+博多帯
9月中旬は
お彼岸や普段のお出かけにぴったり。残暑にも対応できる快適な組み合わせです。

3. 単衣のお召し+夏名古屋帯でお出かけ仕様
9月下旬は
気の張らないお食事や集まりに。帯揚げや帯締めを秋色にすれば、季節感がしっかり出ます。


まとめ
9月は「単衣の季節」と言われていますが、実際はまだ残暑が厳しいことも多く、快適さを重視した着物選びが大切です。
- 着物は「暦やルール」よりも「体感や快適さ」を優先しましょう。
- 夏物を色で秋らしく見せたり、単衣着物の下は夏仕様で涼しく着こなす工夫もおすすめです。
カジュアルなシーン、つまり儀式的な場でなければ、あまり細かく気にする必要はありません。
基本的に透ける着物(紗・絽など)を避けていれば、あとは自身の体感温度で選んでも大丈夫です。
少しずつ秋を意識しつつ、残暑を無理なく楽しめる装いをしてみましょう。着物の季節の移り変わりは、あれこれ考えるのも特別な楽しみのひとつです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
着付け教室を開いています。ご感想やお問い合わせお待ちしています。
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