この記事は「10月の着物選びに迷う方」向けです。
10月になると、「もう袷に替えたほうがいいのかな?」「まだ単衣でもいい?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
暦の上では袷(あわせ)の季節ですが、最近の10月は暑い日も多く、昔ながらの決まりごとでは当てはまりにくいこともあります。
私的なお出かけには、無理して暑さを我慢するより、今の気候に合わせて自分の心地よい装いで良いと思います。
この記事では、10月に単衣を着ても大丈夫な理由と、季節感を大切にしながら気温に合わせて心地よく装うコツを、私の体験を交えてご紹介します。
【結論】10月でも単衣の着物でOK!
10月でも、単衣の着物を着てまったく問題ありません。
昔ながらの決まりでは10月から袷(あわせ)に衣替えするのが一般的ですが、
近年は気温が高い日が多く、無理に袷を着ると暑くて疲れてしまうことも。
もちろん、単衣で寒いと感じる場合は袷を着てください。
今の時代は、「暦」よりも「体感」に合わせて快適に着ることが何より大切です.
※ただし、季節に厳格な集まりなどのときはその場のルールに従ってください。
【理由】気候の変化での“柔軟な選び方”
もともと着物の季節の目安は以下のように決まっていました。
【着物の目安】
- 単衣(ひとえ):6月・9月
- 薄物(うすもの):7月・8月
- 袷(あわせ):10月〜5月
【帯の目安】 - 5月・9月・10月は「単衣向き帯」を使用して残暑・初秋に対応
- 夏帯(絽・紗・麻)は6〜8月限定
- 袷用帯は11月〜翌年3月、寒さに合わせて厚手の正絹帯を
単衣向き帯 = 軽く、薄手で単衣着物に合わせても季節感・着心地が損なわれない帯のことです。
基本的にはこの表のようなイメージを持つとわかりやすいです。
袷用半衿は塩瀬や季節に合わせた刺繍やレース素材で、絽半衿は6月から9月が原則です。
| 月 | 着物 | 襦袢 | 帯 | 帯揚げ・(帯締め) | 半衿 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | 袷(裏付き) | 長襦袢(裏がついた冬用) | 袷用 | 袷用・(通年用) | 塩瀬など絽半衿以外 |
| 2月 | 袷 | 長襦袢(裏がついた冬用) | 袷用 | 袷用・(通年用) | 塩瀬など絽半衿以外 |
| 3月 | 袷 | 長襦袢(裏無しも可) | 袷用 | 袷用・(通年用) | 塩瀬など絽半衿以外 |
| 4月 | 袷 | 長襦袢(裏無しも可) | 袷用 | 袷用・(通年用) | 塩瀬など絽半衿以外 |
| 5月 | 袷・単衣(早めの人) | 単衣襦袢 | 袷用・単衣向き用 | 袷用・楊柳(通年用) | 塩瀬または楊柳半衿 |
| 6月 | 単衣 | 絽または麻襦袢 | 単衣用・夏用 | 絽や麻・(夏素材・通年用) | 絽半衿 |
| 7月 | 薄物(絽・紗・麻) | 絽または麻襦袢 | 夏用 | 絽・麻・(夏素材・通年用) | 絽または麻半衿 |
| 8月 | 薄物 | 絽または麻襦袢 | 夏用 | 絽・麻・(夏素材・通年用) | 絽または麻半衿 |
| 9月 | 単衣(上旬は薄物も可) | 単衣襦袢 | 夏用・単衣向き用 | 絽・楊柳・袷用(夏素材・通年用) | 絽から楊柳や塩瀬へ切替時期 |
| 10月 | 単衣〜袷 | 単衣襦袢・長襦袢(裏無しも可) | 単衣向き用・袷用 | 袷用・通年用 | 塩瀬など絽半衿以外 |
| 11月 | 袷 | 長襦袢(裏無しも可) | 袷用 | 袷用・通年用 | 塩瀬など絽半衿以外 |
| 12月 | 袷 | 長襦袢(裏がついた冬用) | 袷用 | 袷用・通年用 | 塩瀬など絽半衿以外 |
けれども最近は10月でも25℃前後の日が続くことがあり、襦袢まで袷を着ると暑く感じることもしばしばです。
かと言って、暑いからといっていつまでも夏物を引きずるのも季節感を重視する着物には良くないのです。
単衣や袷用をミックスして柔軟に選ぶことが重要です。
【暑さが残る10月のミックス例】
| アイテム | 素材・種類 | ポイント・注意 |
|---|---|---|
| 着物 | 正絹単衣、ポリエステル単衣、木綿着物 | 透けないもの。汗対策に洗える着物が便利 |
| 襦袢 | 単衣襦袢(絽でない夏単衣襦袢) | ウォッシャブル素材が便利。「爽竹襦袢」「き楽っく襦袢」など |
| 半衿 | 塩瀬、レース貼り塩瀬(袷用でOK) | 厳密には単衣用楊柳半衿もあるが、袷用で問題なし |
| 帯 | 袷の八寸帯(帯芯なしや博多織など)、半幅帯 | 夏帯(絽)は避ける。袷帯でも薄手で軽やかな印象の帯が◎ |
| 小物 | 秋色を意識(茶、辛子、抹茶など) | 帯揚げや帯締めに秋色を取り入れる。なければスカーフやベルトで代用も可能 |
暑さが残る10月のミックス例の表
※ 単衣襦袢を持っていない場合やどう合わせたらわからない場合は下の写真の様に和洋折衷コーデも便利です。
私は汗取り肌着や補正無しで着る場合は汗が着物に移っても大丈夫な洗える着物にしています。
以上のように、無理して季節のルールに合わせるより、その日の気温と自分の心地よさを優先するほうが、快適に装えます。
以下は1枚あると便利な襦袢です。
マイサイズに仕立てるなら東レシルックの絽目が入っていない「夏単衣襦袢爽竹」がおすすめです。袖口から見えるだけでは夏襦袢に見えず、室内で働くスタッフは年中着用する人もいます。
裄や袖丈が違う着物を着たいとか、替え袖の柄を楽しみたい方にはポリエステエル素材の「き楽っく」がおすすめです。
単衣の替え袖をお持ちの方には、『き楽っく極』がおすすめです。これは袖と裾が正絹で、一枚で一年中着られて、着心地が良くてコスパも優れています。私も襦袢を着る場合はこれ一択です。
暑さの残る10月は柔軟な工夫で乗り切ります。
【実例】単衣でも季節感を出せる工夫
私自身も以前は、「10月=袷」と習い、そうするのが正しいと思い込んでいました。
でも、ある年の10月中旬に袷を着て出かけたところ、日中は暑くて大汗で身体にも着物にも大変なダメージを被ったことがあります。
その経験から、「気温で決めよう」と考え方を変えました。そう決めてからとても楽になりました。
今は、最高気温が25℃前後なら単衣、20℃を下回るようなら袷という目安を自分なりに持っています。
① 単衣着物でも、帯や小物で秋らしさを
単衣着物でも、帯や小物で秋らしさを出すことができます。
たとえば――
- 明るめの紬に、こげ茶やえんじの帯を合わせる
- 帯締めをワイン色やからし色、茶色に変える

同じ着物に白い帯で6月の涼やかなコーディネートです。


こうした小物だけ変えるだけで着心地は快適に、見た目はしっとりとした秋の雰囲気の装いになります。
② 洋服ミックスで秋らしさ
襦袢の代わりに秋色のブラウスを合わせ、洋服ミックスで襦袢や補正の枚数を減らしながら、木綿着物と秋らしい小物で暑さ対策と季節感を楽しめます。

ユニクロのエアリズムシャツに麻の半袖ブラウス、綿着物、塩瀬の袷帯を合わせ、帯を守るために羽織を重ねましたが、歩くと汗ばむほどでした。
③ 脱ぎ着ができる羽織で温度調整
日中は暑いけど、帰りが夜など肌寒い時間帯に及ぶ時は、脱ぎ着ができる羽織をプラスすることで温度調整ができます。
夜遅くに帰宅予定でしたので単衣の着物の上に袷の羽織りを羽織って仕事に出かけました。


【まとめ】季節の決まりより「自分の心地よさ」を大切に
10月の着物選びは、「単衣か袷か」という形式にとらわれず、その日の気温や自分の快適さを基準にするのがおすすめです。
単衣でも袷でも、あなたが心地よく過ごせる装いが一番の正解。単衣から袷にしたり、また戻したりでもOKです。
着物は本来、季節を感じながら自分らしさを表現するものです。小物などを変えてで十分季節感を楽しめます。
無理をせず、その日の気温と体感に合わせて選ぶことで、自然と美しく見えます。
どうぞ、自分のペースで秋の着物時間を楽しんでください。

最後までお読みいただきありがとうございました。この記事が参考になれば嬉しいです。
着付け教室を開校しています。ご質問等お問い合わせお待ちしております。

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