はじめに——着物と歩んできた私のこと
私は30年以上、着付け講師として着物に携わってきました。
もともと着物好きだった母や、着れないのにどっさり嫁入り道具として持っていった姉から受け継いだ着物や帯を、今も大切に着続けています。形見の着物に袖を通すたびに、母や姉のことを思い出す——着物はそんな力も持っているものだと、身をもって感じています。
シニアになった今、着物との付き合い方も変わってきました。以前と同じようには動けない体の変化、似合う色やコーディネートの変化。それも含めて楽しみながら、シニアだからこそのコーディネートや、楽にきれいに着付けをする方法をInstagramやYouTubeで発信しています。
着付け講師としての知識と、シニア当事者としての実感——その両方をお伝えできるのが、私の発信のスタイルです。
今回は、一枚の紅花紬に帯を三本替えて、それぞれのお出かけシーンや使った小物をご紹介します。
コーディネートのコツ
着物は帯ひとつで、まったく違う顔を見せてくれます。 今回は、手持ちの紅花紬一枚に帯を三本替えて、それぞれのお出かけシーンを考えてみました。
シニアのコーディネートで私がいつも心がけているのは、「すっきりまとめること」。年を重ねると、顔色も髪も、どうしても全体がぼんやりしてきます。だからこそ、柔らかい雰囲気の中にも、きちんとしたまとまりを意識しています。悪目立ちせず、でも地味すぎない——そのバランスが、シニアの着物の醍醐味だと思っています。
パターン① 花倉織の帯 〜雨に濡れた桜を見に〜
ベージ&グレーベースに幾何学的な絽目が織り出された花倉織の帯を合わせました。着物の縦縞の織り感と帯の素材感が響き合って、全体がしっとりと落ち着いた雰囲気に。
雨の日のお花見という少し特別なシチュエーションに、華やかすぎず、でも暗すぎない、この帯がぴったりでした。

【着物】 紅花紬(縦縞・ベージュ&ブルーグレー系)
【帯】 花倉織の名古屋帯(ベージュ&グレーぼかし・幾何学紋)
【帯締め】真田紐(佃煮の箱にかかっていて長さもピッタリ!)に母からもらったメノウを自作で 帯どめに
【帯揚げ】菱形の地紋に絞り
私の真田紐の長さは109cm です。


小物の購入のポイントは、合わせたい手持ちの着物や帯の色に合わせることです。
ものを増やしたくない方は一本だけの購入をお勧めします。
パターン② 白い花の染め名古屋帯 〜春のランチへ〜
着物整理のときにいただいた名古屋帯です。ラベンダーグレーの地に白い大輪の花が染められた、春らしい一本。紅花紬のくすんだベージュに、ラベンダーが思いのほかよく映えました。
パッと明るくなるこのコーディネートは、春のランチへのお出かけにちょうどいい装いです。

【着物】 紅花紬(縦縞・ベージュ&ブルーグレー系)
【帯】 染め名古屋帯(ラベンダー地・白い大輪の花)
【帯締め】白地に薄い水色の縁取りと捻りが入った組み方 (太田籐三郎先生作をゑり善で購入)
【帯揚げ】自分で草木染めした松葉地紋の縮緬(太田籐三郎先生の工房にて着付け教室の実技として)

パターン③ 綴れの帯 〜和のお稽古事へ〜
落ち着いたグレーの地に、墨書き風の文様が散った綴れの帯。主張が静かで、洋服の方と一緒でも浮かない、馴染みやすいコーディネートです。よく見ると味わいのある帯で、和のお稽古事などにもぴったりの一枚です。

【着物】 紅花紬(縦縞・ベージュ&ブルーグレー系)
【帯】 綴れの名古屋帯(グレージュベース・墨書き風文様)
【帯締め】グレージュに辛子色と こげちゃのぼかし
【帯揚げ】ブルーにグレーのぼかしいり

コーディネートに迷ったら——帯選びのコツ
帯選びに迷ったときの基本は、着物の中にある色を拾うこと。紅花紬のようにいくつかの色が混ざっている着物なら、その中の一色を帯に持ってくるだけで、自然にまとまります。
紅花紬には濃淡の辛子色、ブルーグレイ、焦茶色が入っています。だから、この3本の帯の相性がいいのですね。
番外編 —— 同じ着物で「凛」とした装いに
3パターン以外にも、この紅花紬でこんなコーディネートを楽しんでいます。
お出かけ先によって、帯の主張を少し強めにしてみるのも着物の醍醐味。同じ着物でも、帯の格や存在感を変えるだけで、場の雰囲気にぴったり合わせることができます。
こちらはブログの勉強会に参加した時のコーディネートです。学びの場への敬意を込めて、いつもより凛とした装いを意識しました。

【着物】 紅花紬(縦縞・ベージュ&ブルーグレー系)
【帯】 お召しの名古屋帯(深緑ベースに薄グレー)
【帯締め】 薄い鶯色に蜻蛉玉
【帯揚げ】深緑とくすんだピンク色の2色染

きれいに見せるために、もう一つ大切なこと
どんなに素敵なコーディネートでも、着付けが乱れていると全体の印象が台なしになってしまいます。
有名なインフルエンサーなら多少のゆるさも個性として見てもらえるかもしれませんが、やはり着付けの美しさは、着姿やコーディネートの完成度を大きく左右します。
でも、難しく考えなくて大丈夫。今は着付けを楽にきれいに整えてくれる便利グッズもたくさんあります。洋服だって、着こなし方で印象がまったく変わりますよね。着物も同じ。
「着姿の美しさ」が、コーディネートの仕上げなんです。
着付け講師の私が愛用している便利グッズはこちら
他にも
「コーリンベルト」(衿合わせや伊達襟が出てこないように止める)
「き楽っく極」長襦袢(正絹でも自宅で丸洗いでき、半襟もファスナーで取り換え簡単)
「汗とり補正着・くノ一麻子」(夏の汗とりと涼しい補正が一石二鳥)
など便利で新しいものがたくさん出ています。
使わない手はありません。


まとめ
同じ着物でも、帯が変わればお出かけ先も気分も変わります。
タンスに眠っている帯を、ぜひもう一度手に取ってみてください。きっとまだ出会っていない組み合わせが、見つかるはずです。
最後に、この記事でお伝えしたコーディネートのコツをまとめておきます。
【コーディネートのコツまとめ】
- 着物の中にある色を帯や小物に拾うと自然にまとまる
- 着物にも帯にも「ぼかし」を取り入れるとシニアらしい柔らかさが出る
- 帯の主張はお出かけ先に合わせて調整する
- すっきりまとめることを意識する——悪目立ちせず、でも地味すぎない
- どんな素敵なコーディネートも、着姿の美しさが仕上げになる
- 便利グッズを上手に使って、楽にきれいな着付けを
最後までお読み頂きありがとうございます。この記事が参考になれば嬉しいです。

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