今日は、往復4時間かけて友人の着物の整理をお手伝いしてきました。
同世代の女性たちと話していると、結婚の際に親が用意してくれた着物や長襦袢、帯などを「着ないけれど、捨てる決心もつかない」と悩んでいる方が本当に多くいらっしゃいます。
今回は、そんな悩みを持つ方のお役に立てるよう、着物類の整理や処分の“見極め方”についてまとめてみました。
大切な思い出とともにある着物たちを、納得のいくかたちで整理するためのヒントになれば嬉しいです。
まずは全体を見渡してみましょう
まずは、持っている着物や帯、長襦袢、小物類を一度すべて出して、種類ごとに並べてみるところから始めましょう。
スペースが限られている場合は、清潔なテーブルの上に一枚ずつ広げて確認するのもおすすめです。床に広げるよりも立ったり座ったりの動作が少なくて済むので、体への負担も軽く、ゆっくり丁寧に見極めることができます。
着物は桐の箪笥や紙袋に入れっぱなしになっていることも多く、そのままだと傷みやカビの原因にもなってしまいます。風通しの良い日を選んで、空気に触れさせながら整理を進めてみてください。
ちなみに今日は、空気が比較的乾燥している4月後半ということもあり、着物を広げて整理するにはちょうど良い時期でした。
処分の判断基準:手放しても大丈夫なもの
整理の中で「これはもう手放してもいい」と判断できる目安をいくつかご紹介します。
• カビ、シミ、虫食いなどがあるもの
→ 無理に保管すると他の着物に悪影響が出る場合も。潔く処分をおすすめします。
虫食いが生じやすいので、ウールの着物を保管する場合は正絹と別にしてください。
• サイズが合わないもの
→ 裄や身丈が大きく違っている場合は、着るのが難しくなるため処分の対象に。
若いときの着物は袖丈が長く裄(肩幅と袖幅の合計)が短く仕立てられています。
• 色柄や素材が古すぎて活用しづらいもの
→ 現代のスタイルに合いにくいものは、思い切って手放す選択肢も。
昔の着物は色合いが鮮やかなものが多く、そのままの組み合わせで着ると、今の感覚では少し派手すぎて目立ちすぎてしまうことがあります。
保留にしてよいもの:迷ったら“セットで保管”
すぐに手放すか決められないものは、ひとまず“保留”にしてもOKです。ただし、その際には「セットにして保管する」ことをおすすめします。
- • 着物と、それに合う帯
- • 長襦袢(半衿付きなら着やすいですが、汚れたりかびたりしていたら外して保管してください)
- • 帯締め・帯揚げ
- • 羽織やコートがある場合は一緒に
こうしてセットにしておくと、将来、誰かに譲るときや自分が着るときにも迷わずに済みます。
残す着物は「誰が・どう使うか」を明確に
「これは残しておきたい」と思うものについては、ぜひその理由も含めて明確にしておきましょう。
• 誰かに譲りたい着物なら、「誰が」「いつ」着ることを想定しているのかをイメージしておくと、管理がしやすくなります。
友人も、お孫さんが将来着られるようにと、TPO(どんな場面で着られるか)をお伝えし、いくつかの着物を残しておくことにされました。
• 簡単なメモを添えておくと、受け取る人もその着物の背景を理解しやすくなります。(例:母が20代の頃に作った訪問着、など)
処分する方法はいろいろあります
手放すと決めた着物でも、ただ捨てるだけではありません。以下のような方法もあります。
• 着物好きな知人や家族に譲る(私ともう一人の友人も帯をいただいて帰りました。)
• リサイクルショップや着物買取を利用する
• 状態が良ければリメイクや、地域の施設などへ寄付という選択も(リメイクに合うものを提案させていただきました)
最後に:着物の整理は、人生の整理かもしれません
着物の整理には、思い出や感情がついて回ります。すぐにすべてを決める必要はありません。
でも、「着るか、着ないか」「残すか、手放すか」という軸をはっきり持つことで、気持ちが整理されていく感覚もあります。
「いつか着るかも」と思っていた着物が、誰かの新しい思い出になるかもしれません。
着物の整理を、未来に向けた前向きな一歩として、気持ちよく進めてみませんか?
【着物整理チェックリスト】
※着物や帯は1点ずつ手に取って、下のチェック項目を確認してみてください。古い着物にはホコリやカビがある場合もあるので、できればマスクを着用して作業されることをおすすめします。
1. 状態チェック
- シミやカビ、変色、虫食いがない
- におい(湿気、カビ、など)は気にならない
- 糸のほつれや、裏地の劣化がない
- 保管中の折ジワが取れそう(アイロンで対応可の場合でも、アイロンはプロに依頼してください。)
2. サイズチェック(着物の場合)
- 身丈が自分や想定する人に合っている(±5cm程度なら直せる場合があります)
- 裄丈(肩幅+袖幅)が合っている(±3cm程度なら直せる場合があります)
- 身幅(ヒップサイズ)は足りている(ヒップ+10cm以上が理想)
サイズ直しは費用がかかるので、検討してください。
3. 活用イメージ
- 現代の感覚でも着やすい色柄
- 合わせたい帯がある
- お出かけや行事など着用シーンが思い浮かぶ
- 将来的に孫世代が着る可能性がある
→チェックが多ければ「残す」、少なければ「処分or保留」の目安に。
【着物整理シート(記入用テンプレート)】
種類 | 柄や特徴 | サイズ | 状態 | セット内容 | 備考(想い・誰に残すかなど) |
---|---|---|---|---|---|
訪問着 | 牡丹と菊の友禅 | 身丈160cm/裄65cm | 良好 | 袋帯・長襦袢・帯締め帯揚げ | 母が結婚時に仕立てたもの。孫の成人式に? |
小紋 | 細かい麻の葉模様 | 身丈155cm/裄63cm | ややシミあり | なし | サイズが合わない。リメイク候補? |
黒留袖 | 松竹梅と鶴の金駒刺繍 | 身丈162cm/裄66cm | 良好 | 比翼付き・袋帯あり | 子どもの結婚式用に保管 |
羽織 | 江戸小紋風のグレー地 | 裄64cm | 少し古びて見える | なし | 洋服風リメイクできそう |
必要に応じて「処分」「保留」「残す」「譲渡予定」などのメモを欄外に書いておくと便利です。
お手伝いをして
長時間にわたる作業で少し疲れもありましたが、友人は「タンス一棹に収まる分だけ残す」と目安を決めて整理を進めたことで、気持ちがとてもスッキリしたと喜んでくれました。最後には感謝の言葉もいただき、私自身もお手伝いできて良かったと感じました。
① 着物の整理は、思い出との向き合いでもありますが、こうして一歩進めることで、心まで軽くなるのだと改めて感じた一日でした。
② 誰かの着物整理をお手伝いすることは、自分自身の見直しにもつながります。大切なものを大切にするために、私も少しずつ見直していこうと思います。
③ 「たくさん持っていること」ではなく、「必要なものを大切に持つこと」の心地よさに気づかせてもらった時間でした。
④ 着物がもつ思い出とともに、これからを心地よく生きるための整理が、少しでも多くの方にとって前向きな時間になりますように。

お母様の未使用の染帯をいただきました。コーディネートが楽しみです。

最後までお読みいただきありがとうございました。この記事が参考になれば嬉しいです。
着付け教室を開校しています。ご質問等ございまいましたら、お気軽にお問い合わせください。
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