「今日は着物を着て出かけよう」と思っていたのに、
着付けがうまくいかず、何度もやり直しているうちに時間だけが過ぎていく。
帯が思うように決まらない、着崩れが気になる、鏡の前でため息…。
そんな経験はありませんか?
私はこれまで、着付け教室の講師として、
「その教室のやり方を繰り返して身につけること」を大切に伝えてきました。
きれいに着るために補正を工夫し、帯が短ければ調整し、
どうすれば崩れず美しく着られるかを生徒さんと一緒に試行錯誤してきました。
それは決して間違いではなく、
きちんと着る着物の美しさは、今でも素晴らしいものだと思っています。

うまく着られない日
ところが、着付け教室の委託を解消し、自由に着物を楽しもうとした途端、
「自分できちんと着たいのに、なぜかうまくいかない」
そんな日が増えてきました。
背中が丸くなり、
以前は気にならなかった帯幅が広く感じる。帯揚げが帯の中に入って見えにくい。
もしかすると、ウエスト周りの幅が変わってきたのかもしれません。
そんな年齢による体型の変化を実感しています。
以前は平気だった補正が、今はつらく感じなるべく省きたいと思うこと。
どれだけ工夫しても、どうしてもしっくりこない日もあります。
そして
「今日はもういいか…」
と、少しずつ着物から気持ちが離れていく自分に、正直戸惑いました。
着付け教室に“きちんと着て行かなければならない”という義務感がなくなったことも、少なからず影響しているのだと思います。
そう思いながらも町中で着物を着ている人を見ると「やっぱり、着物はいいなぁ〜」とつくづく眺めています。
きちんと着なくても、着物は楽しめる
そんな中で、和洋折衷のコーディネートや、
洋服ミックスの着方を取り入れるようになりました。
すると、不思議と気持ちが楽になり、
「着物って、もっと自由でいいんだ」と、
今さらながら気づいたのです😅
若い方たちが、
自分の感覚で、のびのびと着物を楽しんでいる姿にも、
たくさんのヒントをもらいました。
今現在、講師という立場を離れたことで、
「正解」に縛られすぎていた自分にも気づかされました。
みつ子若い方の着方に触発されて、初めて、デニム着物にエナメルのショートブーツで出かけたときの軽快さは忘れられません!
長襦袢は着ず、
上半身は洋服用の下着の上に黒のシースルーシャツを合わせました。
下半身は黒のスパッツに、SOU・SOUのハイソックス。
帯揚げにはエルメスのスカーフを使い、
差し色として全体のバランスをとっています。
「着物だから特別に」と構えず、
デニムを着るような感覚でコーディネートしました。




自由=何でもあり、ではありません
ここで一つ、大切なことがあります。
自由に楽しむといっても、何でもありというわけではありません。
着物も洋服と同じで、
季節感や素材感といった、踏み外してはいけないポイントがあります。
また、着物は一人で着るものではなく、
大概は人と一緒に過ごす装いでもあります。
- どんな場に行くのか
- 誰と一緒に過ごすのか
- 相手に不快な思いをさせないか
こうしたある程度の配慮は、着物でも洋服でも同じことだと思います。
頑張りすぎて、着物をあきらめてほしくない
これまで、
着付けができなくて嫌になってしまった方、
イベントに参加するために頑張って着付けたけれど、
結局間に合わず欠席してしまったり、最初から出席を諦める方を、多く見てきました。
本当は着物が好きなのに、
「ちゃんと着られないから」と、
着物から遠ざかってしまうのは、とてももったいないことです。
初心者時代の失敗談
若い頃のことです。
実家を離れることになり、「困らないように」と最低限の着付けを習っていました。
結婚後、初めて自分で着物を着て、近所を散歩した日のこと。
なんとなく違和感があり、よく見てみると――
なんと、着物の合わせが反対になっていました(汗)。
大慌てで家に戻り、着付け直したという苦い(でも今では笑える)思い出があります。
この失敗以来、合わせを間違えることは一度もありません。
また、夏休みのたった一ヶ月着物から離れただけで、
それまで習っていた帯結びが急に怪しくなってしまったこともありました。
こうした失敗を重ねる中で、
「着付けは一度覚えたら終わりではなく、
繰り返し着て、失敗して、体で覚えていくものなのだ」
ということを実感しました。
だからこそ、
「うまく着られない」「できなくなった」と感じることは、
決して後退ではありません。
着物と向き合ってきたからこそ、出てくる感覚なのだと思っています。
着物を楽しむ入口は、もっと低くていい理由
着物を楽しむ方法は、ひとつではありません。
まずは
- 洋服ミックスで楽に着る
- 和洋折衷コーデを楽しむ
- リサイクルショップで気軽にそろえる
そんなところから始めてもいいと思っています。
大切なのは、
「きれいに着られたか」よりも
「楽しかったかどうか」。




どうしても出かけたい日のための、最低限の着付け
もし、着物を着てイベントに参加したいのに、
どう頑張っても着付けがうまくいかない日があったら…。
すべてを完璧に仕上げようとしなくて大丈夫です。
私は、まずこの2点だけを意識すればいいと思っています。
① 腰紐をしっかり締めること
ここが緩いと、全体が崩れやすくなります。
② 襦袢や着物を、体に沿わせること
大切なのは、中にたまった“空気”や余分なたるみを、手でそっとなで下ろすようにして、体に沿わせること。
引っ張ったり、無理に整えたりせず、「ふくらみを残さない」ことだけ意識してください。
それだけで、衿元や裾の印象は大きく変わります。
帯は、きれいに結べなくても構いません。
コートや羽織で隠してしまえば、ほとんど気にならないものです。
これだけでも、
出かけるハードルはぐっと下がりませんか?




なぜ、この方法をおすすめしてきたのか
この考え方は、
私が着付け教室の講師をしていた頃、
イベントのたびに生徒さんへお伝えしてきたことでもあります。
教室のイベントでは、必ず講師が同行していました。
会場に着いてから、
着崩れたところや気になる部分は、
その場でお直しができたからです。
だから私は、
「家で完璧に仕上げなくていい」
「まずは着て、出かけましょう」
とお話ししていました。
着付けができなくてキャンセルするよりも、
気軽に着て出かけることの方が、
何よりの練習になると思っているからです。
【注意】この方法が向かない場面もあります
ここまでお伝えしてきた着方は、あくまでもカジュアルな場や、気軽なイベント向けの考え方です。
結婚式や公式な式典などのフォーマルな場では、装いそのものが相手への礼儀になるため、
基本に沿った着付けが必要になります。
ただ、最初から完璧を目指す必要はありません。
迷ったときは、洋服にするというのも立派な判断ですし、着付けのプロに頼ることも、安心につながる選択です。
また、フォーマルな着付けは、少しずつ経験を重ねながら身についていくもの。
まずは、安心できる場で着物を楽しむことから始めてみてください。
プロに着せてもらうと、自分では気づかなかったポイントに目が向くことがあります。その経験が、次に自分で着るときのヒントになることも少なくありません。
経験は、いずれフォーマルにつながっていく
ただ、カジュアルに着物を楽しむことと、
フォーマルな着付けができるようになることは、
決して別の道ではありません。
いろいろな経験をして、
何度も着て、外に出て、少しずつ慣れていく。
その積み重ねが、
いずれフォーマルな着付けや、
着物のサイズの考え方、
細かな知識へと自然につながっていきます。
最初からうまく着られる人はいません。
どんな人も、最初は着物初心者なのです。
着物は、もっと自由でいい
着物は、
完璧に仕上げてから楽しむものではなく、
楽しみながら覚えていくもの。
フォーマルな場ではきちんと。
それ以外の日は、ハードルを下げて自由に。
着物を楽しむ入口は、思っているよりずっと低くていいのです。
うまく着られない日があっても、
自分を責めなくていい。
今の自分に合った着方で、
着物と長く付き合っていけたらいいなと思っています。
きちんと着たい方には、きちんとお伝えします
もちろん、
「きちんとした着付けを身につけたい」
「フォーマルな場できれいに着たい」
そんな方の気持ちも、とても大切です。
正統派の着付けを否定するつもりはありませんし、
必要な方には、これまでの経験を活かして、
きちんとお伝えしていきたいと思っています。
初心者時代の失敗談
若い頃のことです。
実家を離れることになり、「困らないように」と最低限の着付けを習っていました。
結婚後、初めて自分で着物を着て、近所を散歩した日のこと。
なんとなく違和感があり、よく見てみると――
なんと、着物の合わせが反対になっていました(汗)。
大慌てで家に戻り、着付け直したという苦い(でも今では笑える)思い出があります。
この失敗以来、合わせを間違えることは一度もありません。
また、夏休みのたった一ヶ月着物から離れただけで、
それまで習っていた帯結びが急に怪しくなってしまったこともありました。
こうした失敗を重ねる中で、
「着付けは一度覚えたら終わりではなく、
繰り返し着て、失敗して、体で覚えていくものなのだ」
ということを実感しました。
まとめ
失敗を重ねながら、自分の着物が身についていく。
着物は、最初からうまく着られるものではありません。
間違えたり、戸惑ったり、「あれ?」と感じる経験を重ねながら、少しずつ自分のものになっていきます。
初心者の頃の失敗も、年齢を重ねてから感じる違和感も、
どちらも「着物と向き合ってきた証」。
完璧に着ることよりも、
「また着てみよう」と思えることのほうが大切なのかもしれません。
失敗しても大丈夫。
着物は、何度でもやり直せて、何度でも楽しめます。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
「うまく着られない日があってもいい」
そんな気持ちで着物と付き合いたい方に向けて、着付け教室も開いています。
基礎を大切にしながら、無理のない着方をお伝えしています。
教室の内容は、着付け教室からご覧いただけます。










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