
着物って、流行なんて関係ないと思ってたけど…やっぱりあるのかしら?



着物は昔から変わらない日本の伝統衣装というイメージがありますし、何十年も大切に着られるものですから、「流行」とは縁がないようにも思えますが、色柄や着こなし方にも、やっぱり時代の空気ってあるものなんですよね!



でもさ、高いし…そう簡単に買い替えられるもんじゃないわよ。



着物の整理をする時、“今の流行”を基準にして手放すかどうか判断してもいいの?



着物に長年関わってきましたが、
「着物にもある流行」とどう付き合うか、流行遅れの着物はどうしたら良いか…。
着物整理を考える時どう対処すればよいかを実体験を交えてお話ししたいと思います。
着物にも「流行」はあるんです
着物の流行は、洋服のように年ごとにガラリと変わるわけではありませんが、長い目で見れば、確実に「時代の好み」が存在しています。
たとえば、昭和の時代には、はっきりした色の対比や大胆な柄行きが人気でしたし、バブル期には華やかな訪問着や金銀の箔を使った帯が流行しました。
そして今の時代は、淡いトーンややわらかい印象の着こなし、シンプルな美しさが好まれています。
また、帯の結び方や小物の使い方も、昔ながらの「きっちり感」よりも、今は「こなれ感」や「抜け感」を意識したスタイルが支持される傾向にあります。
流行に合わせて買い替える?それって現実的?
とはいえ、着物は高価です。
簡単に流行に合わせて買い替える…なんて、なかなかできるものではありませんよね。
私自身、若い頃に誂えた着物を長年抱えていましたし(2024年に思い切って断捨離しました)、母や姉妹から譲り受けたものもまだ着ていないものもあります。それらを見ていると、「今の流行とは少し違うかも」と思うこともありますが、だからといって全部手放すのはもったいない。何より、思い出や愛着が詰まっているからです。
この先も着物を楽しみたいと思うなら、「流行」も意識しながらよりも「今の自分が着て心地いいか」「似合っているか」を大切にしたい。そう感じるようになりました。
次々と発表される、今の時代の着物にも惹かれますが、辛い断捨離を経験した今、中々、手が出せません。
年齢とともに、“似合う”が変わっていく
もうひとつ実感しているのは、「年齢によって似合う色や柄が変わる」ということです。
若い頃にはしっくりきていた色が、いつの間にか顔色をくすませて見せたり…。
逆に、以前は「派手かも」と感じていた色が、今の自分には顔色をぱっと明るく見せてくれることもあります。
流行とは関係なくても、「今の私には少し派手かな」とか「この色合い、ちょっと寂しく見えるな」と感じることってありますよね。
だからこそ、着物を整理する時には、
「今の私に似合うか?」
「これからも着たいと思えるか?」
この2つを基準にしてみるのがおすすめです。
私も40代の頃はシックな着物が好きで、グレーや茶系の無地紬が多かったのですが、
60代後半から70代になった今、それらを着ると老けて見えてしまうようになりました。
その経験から、今は「年齢に合った色や雰囲気かどうか」を大切にして、着物の整理を進めています。
70代になって断然、明るい色の着物の方が、顔映りが良く、気持ちまで明るくなる気がしています。
着物整理のタイミングは、“自分と向き合う時間”でもある
着物の整理を始めるタイミングは、人それぞれです。
でも、年齢を重ね、暮らし方が少しずつ変わっていくなかで、
「この着物、もう着ないけどどうしよう?」と悩む時期は、きっと誰にでも訪れます。
そんな時こそ、「今の私にとって本当に大切な着物はどれだろう?」と見直すチャンスです。
- すべてを手放す必要はありません。
- 今は着ないけれど取っておきたいもの。
- 今の自分にしっくりくるもの。
- リメイクして新しい形で活かせそうなもの。
一枚一枚と丁寧に向き合いながら、
「残す」「手放す」「活かす」――自分の感覚で選んでいけばいいと思います。
理想は、“本当に着るものだけを残す”ことかもしれませんが、「年齢によって似合う色や柄が変わる」場合があるので
正直、私はまだそこまでは割り切れていません。
無理に流行を追わなくていい。でも、「今の自分らしさ」は大切に
着物の楽しみ方は、時代や流行に左右されすぎる必要はありません。
むしろ、自分らしさを表現できる装いだからこそ、「心がときめくかどうか」「着ていて気持ちがいいかどうか」を大切にしたいものです。
少し古くさくても工夫次第で活かせます。小物などの手軽な部分から流行を取り入れるだけでも十分今風になります。
無理なく、今の自分に合う形で楽しむ。それが、年齢を重ねた私たちの“着物との良い関係”ではないでしょうか。
高価な着物と伝統産業のゆくえ
たしかに今は、高価な着物を買う人が減り、伝統的な織物や染色の産地も次々と規模を縮小したり、廃業に追い込まれたりしています。
着付け教室のメーカーさんのお話会でもう作れなくなるなどを聞くとつい買ってしまったことも有りました。
手織りの綴れの帯です。


私たちの世代が若いころは、「一生もの」として着物を誂えることもありました。
でも、今の暮らしや価値観の中では、なかなかそこまでの買い物は難しいのが現実です。
それどころか着ることすらなく皆さん持て余して困っていると相談を受けます。
それでも、着物を「買うこと」「着ること」「受け継ぐこと」は、単なる贅沢ではなく、文化を守ることにもつながります。
「買わなければ守れない」
「でも、簡単には買えない」
美しい着物を見るたびに、この間で、多くの着物好きの人が揺れているのではないでしょうか。
作り手やメーカーも、なんとか生き延びようと、さまざまな工夫をしています。
最近では、化繊の着物も技術が進み、見た目にも美しく、手間も費用も気軽に楽しめるものが増えてきました。
以前よりもハードルは下がりつつあるかもしれませんね。
いただいた化繊の着物、暑い夏でも思いっきり汗をかいてもよく助かっています。肌着はもちろん麻綿入りのくノ一麻子で涼しくして着ています!


オシャレや美意識は、合理性を超えた“心の豊かさ”
もし合理性だけを大事にするなら、着物はもちろん、おしゃれそのものが必要なくなってしまいます。
でも実際には、私たちは日々の服を選び、季節や気分に合わせて色を変え、
ちょっとした工夫で「今日はなんだか気分がいいな」と感じることがありますよね。
そうした感覚こそが、“心の豊かさ”や“その人らしさ”を育んでくれているのだと思います。
着物には、そういった魅力がすべて詰まっています。
「美しいから」「見ているだけでうっとりするから」「大切にしたいから」――
そんな理由で大事にしたくなるものです。
着物展などではため息が出ます。
それは、単なる合理性では語れない価値。



人生に彩りと喜びを与えてくれる、かけがえのない“豊かさ”なのです。
どう考えればいいか…答えのない問いに向き合う姿勢
流行に合わせて買い替える?それって現実的?この問いに「正解」はないけれど、
たとえばこう考えることはできるかもしれません。
- 無理に買わなくても、受け継いだ着物を丁寧に着てみることも、文化を守る一歩。
- 一枚の反物をリメイクして日常に取り入れることも、職人さんの技を活かす方法。
- 「着物って素敵だね」と言葉にすること、伝えることも、次の世代へのバトン。
そして何より、オシャレや美意識をあきらめずに楽しむことが、伝統を未来につなぐ原動力なのかもしれません。
着物好きだった母の遺してくれた着物に、私の時代の帯や小物に替えて今も大事に着ています。


お気に入りだったものをリメイクして普段に着ています。


おばあちゃんの着物、長年しまい込んで胴裏が黄ばんだ小紋でした。費用は1万縁くらいかかりましたが、解いて洗ってまた仕立てる準備をして孫世代にバトンタッチします。


解く前に一度肩上げをして着せました。とても可愛かったので解き洗いをしても遺したいと思う着物でした。


おわりに
「流行っているかどうか」より、「私が着たいと思えるかどうか」。
そして、小物の工夫で今の感じで着ることもできます。
孫に置いておくという選択肢もあります。
それが、着物とこれからも長く付き合っていくためのヒントになるように思います。
整理のときも、無理に捨てる必要はありません!
一度袖を通してみて、「やっぱり好き」と思えるなら、それが答え。
手放すとしても、それは後ろ向きなことではなく、「今の私に似合うものを大切にしたい」という前向きな選択です。
着物との付き合い方に正解はありません。
年齢を重ねたからこそ見えてくる“私らしさ”を、ぜひ大切にしていきましょう。
2024年の夏に、思いきってたくさんの着物と帯を整理しました。
あとになって「やっぱり残しておけばよかったかな…」と思う着物もありましたが、
そのときは「もう今の私には似合わない」と感じていたので、やはり手放してよかったと思っています。
そのおかげで、家族の負担も少し減らすことができました。



私がもう着物に袖を通せなくなったときには、
「着物deお針子」というサービスを利用して、一回で簡単に迷わず処分できるように、
あらかじめ家族にその方法を伝えておきたいと思っています。



正解は、自分の気持ちがどう感じるか。
たとえいつか手放すことになっても、それまでは「年齢」よりも「自分に似合うかどうか」を大切にして、着物を楽しんでいきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
この記事が参考になれば嬉しいです。
着付け教室を開いています。ご質問や感想などございましたらお気軽にお寄せください。
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