この記事は着物のお手入れ方法がわからない人に読んでいただきたい記事です。
はじめに:眠っている着物、どうする?
タンスの奥にしまっていた着物を久しぶりに取り出してみたら、
「あれ、こんなところにシミが…」と驚くこと、ありませんか?
結婚式やお茶会のあと、そのまま数年……
いざ袖を通そうとすると、うっすら黄ばんでいたり、見覚えのない点シミが出ていたりすることもあります。
そんなときに多くの方が迷うのが、「どうやってお手入れすればいいの?」ということです。
「クリーニングに出したほうがいい?」「着物を専門に扱うお店(悉皆屋〈しっかいや〉)に相談する?」「自分で汚れを落としても大丈夫?」など、判断がむずかしいですよね。
着物の生地や染めはとても繊細なので、間違った方法で扱うと傷んでしまうこともあります。
今回は、汚れの種類やお手入れ先の選び方、そして落ちない汚れでも再生できる方法まで、わかりやすくまとめてみました。
悉皆屋(しっかいや)とは?
着物の丸洗いやシミ抜きだけでなく、染め直し・柄足し・仕立て直しなども対応してくれる専門店です。
経年劣化した着物や、思い入れのある一枚を蘇らせたいときに頼むことが多いです。
初めての方は、見積もりだけでも相談してみると安心です。
結論:汚れの種類と時間で判断する
まず最初に、覚えておきたいのは、着物のお手入れは『汚れの種類』と『ついてからの時間』で最適な対応が決まるということです。ということです。
新しい汚れ—汗や雨などのしみがついた場合は、まず着物専門のクリーニング店に出すのが最善です。これらの店は、着物の生地や染色、装飾に詳しく、繊細な汚れやシミに対して適切な技術で対応してくれます。
古いシミや黄ばみ(経年劣化)は、悉皆屋や専門店に相談し、長年の技術と経験を生かした処置を依頼することが安心です。
軽いホコリや衿の汗ジミについては、自宅で応急ケアを行い、こまめに手入れすることが着物の美しさを保つコツです。特に目立った汚れがなければ、柔らかい布で裾や袖口、衿元を軽く撫でておくだけでも次回の着用時に気持ちよく使えます。
- 汗や雨などの新しい汚れ → 着物専門クリーニングへ
- 古いシミや黄ばみ(経年劣化) → 悉皆屋に相談
- 軽いホコリや衿の汗ジミ → 自宅で応急ケア
放置すると、どんな汚れも落ちにくくなるため、迷ったら自己判断せず、早めに専門店に相談するのが最も安心です。専門店の技術と経験で、大切な着物の美しさを長く保ちましょう。
着物の汚れの種類
同じ「シミ」でも、原因が違えば落とし方も異なります。
ここでは代表的な4つのタイプを紹介します。
▪️ 水溶性の汚れ
汗・※ちょっとした程度の雨・ジュースなど、水に溶けるタイプです。
比較的落としやすく、早めに丸洗いに出せばきれいになります。
ただし放置すると輪ジミになりやすいので、できるだけ早く対応しましょう。
※思いがけず少し降ってきた雨。着物は縮みやすいものが多いので、雨の日には必ず雨ゴート を着て、着物や帯を守るようにしましょう。
▪️ 油溶性の汚れ
ファンデーション・皮脂・口紅など、油分を含む汚れです。
自宅では落としにくく、こすると染料まで取れてしまうこともあります。
着物専門クリーニングや悉皆屋さんでのシミ抜きが必要です。
▪️ タンパク質汚れ
血液や食べこぼしなど、時間が経つと固まる汚れです。
乾燥してこびりつくと、生地の繊維まで変色してしまいます。
見つけても触らず、他に移りそうなときはそっとティッシュペーパーなどでこすらず軽く押さえるだけにし、そのまま専門家に見せるのが安全です。
▪️ 黄変(おうへん)汚れ
長年しまっていた着物に出る“黄ばみ”です。
時間の経過で繊維が変色したもので、完全には落ちにくいですが、
悉皆屋さんなら「染め直し」や「柄足し」で目立たなくすることも可能です。
🪶 ワンポイント
着物の汚れは、時間との勝負です。
同じ汚れでも「ついたその日」に出すのと「数年後に気づく」のとでは、落ちやすさが大きく変わります。
少しでも気になる場合は、早めの相談が安心です。
黄変は胴裏によく見られる現象で費用はかかりますが張り替えも検討するとよいです。



お手入れに出すなら、どこに?
着物のお手入れ先は、汚れの種類や状態によって使い分けるのがコツです。
| 種類 | 特徴 | 向いている汚れ・目的 | 
|---|---|---|
| 呉服店 | 信頼度が高く安心 | 購入した店舗で高級品・相談ベースで進めたい場合 | 
| 着物専門クリーニング | 丸洗い・シミ抜き対応 | 日常的な汚れ・汗ジミ | 
| 一般クリーニング | 洋服メイン、店により差あり (対応可能か問い合わせ要) | 木綿・ウール素材など簡易素材 (浴衣などノリのつけすぎに要注意) | 
| 悉皆屋(しっかいや) | 修繕・染め直し・柄足しも対応 (要見積もり) | 絹物全般・古い汚れ・再生希望 | 
迷ったときは、まず悉皆屋さんに相談するのが安心です。
殆どの店舗は見積もりだけでも対応してもらえます。
お手入れの流れと再生の例
- 着物を陰干しして状態チェック
- 汚れや変色の有無を確認
- 専門店で見積もり(丸洗い・シミ抜き・加工など)
- 必要に応じて補修・染め直し
落としきれない汚れがある場合でも、諦める必要はありません。
柄を足すことで再生することも可能です。
私の姉の留袖の裾に大きなシミがありましたが、柄足しをしてもらうことで見事に蘇り、娘の結婚式でも着用できました。
着物は「直す」だけでなく、「生かす」もの。
この考え方で向き合うと、お手入れも楽しくなります。
帰宅したらすぐに畳んでタンスにしまわず、二〜三時間は湿気を飛ばします。

まとめ:着物を“生かす”お手入れ
着物は、汚れても終わりではありません。
- 汗や雨などの新しい汚れ → 着物専門クリーニングへ
- 古いシミや黄ばみ(経年劣化) → 悉皆屋に相談
- 軽いホコリや衿の汗ジミ → 自宅で応急ケア
早めの相談と、丁寧なプロの手で、何十年も着続けられる「再生の文化」があります。
たんすの中の一枚も、手をかけることで再び輝きを取り戻せます。
費用対効果を考えて、シミや黄変に不安を感じる方も、ぜひ前向きに考えてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。この記事が参考になれば嬉しいです。
着付け教室を開いています。ご質問等お気軽にお寄せください。

 
	 
			 
			
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