着物の処分に悩んでいる方へ
たくさんの着物を手放してきたけれど、まだまだ残っているのが現実。でも年齢を重ねるにつれて、着る機会は少しずつ減ってきています。
このままでは、子どもや家族に迷惑をかけてしまう──
そんな気持ちから、「自分が元気なうちに何とかしなくては」と思い詰めていました。
でも、いざ手放そうとすると、思い出が詰まっていて処分できない…
そんな“着物の生前整理”に悩んでいた私が、ある一言に救われた体験を今回は書いてみたいと思います。
着物の処分、悩んでいた私
子どもたちに迷惑はかけたくない。
「着物の処分、どうしたらいいの?」と悩んでいた私。
自分がいなくなったあと、着物の山を前に「これ、どうしよう…」と困らせたくない。
そう思って、タンスの中を見直しては、少しずつ処分を始めてみました。ある程度は思い切って処分しましたが、
もう一度処分しようと着物を取り出してみると、若い頃に母が用意してくれた思い出の着物や、自分で働いて貯めたお金で買った大切な一張羅が目に入り、結局また元に戻してしまいます。
「これじゃ何も進まない」と、自分にがっかりしてしまったこともありました。
母が持たせてくれたろうけつ染めの単衣の訪問着です。2回くらいしか着ていません。
帯を替えてまた着てみたいと思います。

お気に入りの久米島紬や結城縮、芭蕉布の着物たちは、これまで仕事を頑張ってきた私を支えてくれた大切な相棒でした。

お金の面でも、思い出の詰まった着物としても、とてもじゃないけど手放す気にはなれません。
救われたお嫁さんの一言
そんなある日、着物とは別の話でお嫁さんと話す機会がありました。
ふと、「まだ残っている着物のことも、そろそろちゃんと片付けないと思うんだけど中々思いきれなくて…」とこぼした私に、
お嫁さんは、少し気を使いながらこう言ってくれました。
「お見送りの時に着せてほしい一枚だけ、わかるようにしておいてくれたら、それで十分ですよ。今すぐ全部処分しなくても、置いておいて大丈夫ですから。」
そのひと言を聞いたとき、張りつめていた気持ちがふっとゆるみ、心が軽くなりました。
“全部、自分でなんとかしないといけない”と思い込んでいた私は、「そんなふうに言ってもらえるんだ…」と、ほっとして肩の荷が下りました。
全部自分でやらなくていい
あらためて思い出したのは、自分の母のことです。
母が亡くなったとき、最後に一緒に出かけた思い出の色無地と、母の自作の帯を私が選んで見送りました。
そのとき「多分母が決めたわけではなかったけれど、好きな着物や帯、それを選んででよかった」と思ったのです。
母の形見の着物の中には処分したものもありますが、何枚かは仕立て直して、今も大切に着ています。
それなのに、自分のこととなると「すべてきちんと整理して、使わないものは処分しておかないと」と、がんじがらめになっていました。
着物に限らず、生前整理は「全部やりきらなくてもいい」。
そう気づいたとき、気持ちがふっと軽くなりました。
今の年齢になって、母の着物が思いのほか活躍していて、とても助かっています。

誰かに相談する
着物の処分の悩みは、なんとなく人に言いにくくて、ずっと一人で抱えてきました。
でも、勇気を出して少しだけ打ち明けてみたら、思いがけず気持ちが救われました。
「ひとりで考えこまなくてよかったんだ」
「身近な人に話してみるだけで、こんなに楽になれるんだ」
そんな思いが残りました。
着物も、人生も、“ひとりで全部片付けなくてもいい”ということ、誰かに相談することの大切さを、お嫁さんの言葉で教えてもらったような気がします。
同じ悩みを抱える方へ
着物を処分しきれずに悩んでいる方へ、私の経験が少しでもヒントになればうれしいです。
生きているうちにできる範囲で整理しておけば、それで十分なのかもしれません。
思い出のある着物を無理に手放さなくても、きっと大丈夫。
そして、できれば誰かに相談してみてください。
きっと心が軽くなる一言が返ってくるはずです。
私もこれからは、着物を“残すため”ではなく、“楽しむため”に着ていこうと思います。
あたたかい言葉をかけてくれたお嫁さんにも、心から感謝しています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
着付け教室を開いています。ご一緒に着物を楽しみませんか?ご感想等お寄せください。
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