お嫁入りの際に持ってきた朱色の江戸小紋ですが、数回しか袖を通していないにも関わらず、今の私には派手すぎて着られなくなりました。
彫師の銘が入っていて価値もありそうなのに、残念でなりません。
似たような悩みを抱えている方はいらっしゃいませんか?
お恥ずかしいですが、若かりし頃の写真です。データがないので写真を撮りました。実際はもっと鮮やかな朱色です。
黒の絵羽織で派手さを隠して生田神社で初詣のあと、ホテルオークラまで行きました。
私の着物も派手な色の江戸小紋で、無地に見えるような細かい柄が入っていて、まだしつけがついているわ!
そういえば、母から譲り受けた着物で、私も似たような細かい柄の無地っぽい着物があるわ!
染め替えて楽しく有効活用ができれば一石二鳥よね!
江戸小紋ってどんな着物?
江戸小紋
小紋の一種ですが、遠目には無地に見えるほどの小さな柄を一色のみの型染めで染めた小紋です。
特に格が高い柄として江戸小紋の三役、五役があります。
江戸小紋三役とは
- 鮫
- 行儀
- 通し
江戸小紋五役とは三役に下記二柄を合わせて五役とされる。
4.万筋
5.大小あられ
江戸小紋の用途
柄が細かいほど、ほど慶事や弔事のどちらにもで着用できる着物になります。
五役の柄
明るすぎる色合いは【弔事】不向きなので、年齢に合ったグレーやベージュ系を選ぶと慶弔両用で便利です。
江戸小紋の染め替え手順
一般的に色無地などを、薄い色めに染め替える場合は、まず色抜きをして白生地に戻してから好みの色に染め直します。
ただし、江戸小紋の場合、この方法だと元の型染めの柄も消えてしまいます。
ですので一番効率の良い、上から色掛けをして元の柄を活かしつつ、少し濃い色に染める方法を取ります。
一色染めの染め直し手順
今の色の上から染める場合
- 着物をほどき、一反の着尺に縫い合せ合わせる(解き端縫い)
- 好みの色を指定し、上から色をかけて染め直します。(もともとの色があるため、見本通りの色には染め上がらない)
- 染め上がった色を確認し、問題なければ仕立てる
- 胴裏(裏地)が黄ばんだり汚れている場合は新しい物に交換し、使える時はそのまま利用する
- 八掛(裾の裏地)は一緒に染めてもらうか八掛を新しく選ぶ
- 染め上がった反物を今の自分の寸法で仕立てる
この方法により、元の柄を活かしつつ、落ち着いた新しい色合いで江戸小紋を楽しむことができます。
実際の染め替え
実際に染め替えをしてみた結果をお伝えします。
派手に感じていた江戸小紋を、失敗せずコスパ良く染め直す方法を試しました。
まず、色抜きをすると費用が高くなり、せっかくの型染めが消えてしまう可能性があるため、今の着物の色に合わせて濃い色を重ねる方法を選びました。
しかし、色見本の小さな布では微妙な色合いが分かりづらいため、思い切ってチョコレート色を上から染めてもらうことにしました。
濃紺や濃い紫、濃茶などをかけるとイメージに近い色に仕上げることが出来る
まず着物をほどいて反物の状態にし、それをチョコレート色の染液にどっぷりと浸けて染めます(八掛も一緒に)。
いくつかの工程を経て、最後にきれいに幅を整え、着物として仕立て直します。
朱赤の上から染めるので仕上がりの色は予想が難しかったのですが、意外と良い色に仕上がりました。
もともとの朱赤は今では若い人でも着ないような色味で、時代とともにトーンも変わってきています。
母が嫁入り道具として用意してくれた大切な着物を、こうして再活用でき嬉しいです。
チョコレート色に染めたことで、手持ちのさまざまな帯とも合わせやすくなり、とても重宝しそうです。
帯に合う色合いを考えながら染める色を決めるのが、染め替え成功のコツです。
染めの工程で反物が少し縮むことがあり、今回は生地が縦方向に縮んだため、着物の身丈(丈)がギリギリになりました。
その点は、着付けの際に腰ひもの位置を少し下げるテクニックで調整できます。
もともとこの着物は、朱赤地に江戸小紋の『角通し』という柄が染められており、重要無形文化財の型彫師である樋口実氏の作品です。貴重な朱色の江戸小紋の端切れも、思い出として大切にしています。」
細かい四角形が規則正しく並んでいます
反物に余裕があれば、今の体型に合わせて仕立て直すことができます。若い頃の着物は裄や袖丈が現在の体型と少し違うことが多いので、この機会にしっかり採寸してもらいましょう。また、長じゅばんも寸法を合わせるのを忘れずに。
汎用性が高く、コスパも良い(き楽っく)の長襦袢もオススメです。
まとめ
江戸小紋を染め替えるメリット
• 白抜き紋入りの派手な江戸小紋は、染め替え時に紋を省くことで、着られる場面が広がります。もし紋を入れる場合は、共色(着物の地色と同じ色糸)の刺繍紋(縫い紋)にすることで、より着回ししやすくなります。
• 費用はかかりますが、まるで新しい着物に生まれ変わらせることができます。
• 名古屋帯を合わせれば街着やランチなどのカジュアルなシーンに、袋帯を締めればカジュアルな結婚式やパーティーといった略礼装にも対応できます。
• 季節感のない柄なので着回しやすく、格のある柄行なので、場所を選ばず安心して着用できます。
• 洋服の中に混じっても自然に馴染み、上品さを保ちながら、現代社会に合った「スーツ感覚」の着物として着こなせます。
一見すると色無地のようですが、染め直した江戸小紋です。カジュアルなシーンから袋帯を合わせた準フォーマルまで対応できる、便利な一着に生まれ変わりました。
江戸小紋を染め替えるデメリット
• シミや黄変があると、希望の色に染め替えられないことがあります(江戸小紋に限らず)。
• 元の色の上に染めるため、仕上がりの色を指定することはできません。
• 生地が縮むことがあるため、自分の寸法に合わせて仕立てられないことがあります。
• 解き代や染め替え代、仕立て代など、費用がかかります。
楽しく有効活用する方法
しかし、メリットとデメリットを考慮しても、箪笥に眠っている着物を染め替えることで、持っている帯との年相応のコーディネートが簡単になります。まずはスモールスタートとして、ワンセットのコーディネートを作ってみましょう。名古屋帯や袋帯を合わせれば、カジュアルなシーンから略礼装まで、コスパ良く着物ライフを楽しむことができます。
派手なピンク系の色の場合はグレーや紺色、朱赤系の場合は茶色を重ねると、色合いが抑えられて馴染みやすくなります。
以上が参考になれば嬉しいです。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。着付け教室も開いていますので、ご質問があればお気軽にお問い合わせください。
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