格安反物との出会い
知人から譲り受けた、お爺さんの薄羽織を、袖を外して夏に長年愛用していました。
もともと古かったため、次第に穴が空いて使えなくなり、代わりを探しにリサイクルショップ「彼方此方屋」(おちこちや)へ。
男性用でも、袖を外すだけで女性も着られます。簡単に袖は外せます。

残念ながら男性用の長羽織は見つからず、代わりに女性用の反物がありました。
格安でしたが、所々に小さな穴が空いていたため見送りました。
しかし翌日、別の用事で再びリサイクルショップを訪れたとき、その反物の粋な柄と銀通しという技法に改めて魅了され、購入を決めました。
格安反物との出会いです。
着物ハンガーにかけると、時代の流行なのか袖がとても長いのがよくわかります。この長さのお陰でベストができました。

なぜ夏に袖なし羽織?
和服の決まり
着物に馴染みのない人からすれば、『夏はノースリーブのブラウス1枚で出かけられるのに、どうして着物はわざわざ上に羽織るの?』と不思議に感じるかも知れませんね。
暑い夏でも、「チリよけ」として、着物の上に何か羽織ることがエチケットとされているのです。
袖なし羽織の必要性
• 前が開いていて風通しがよく、
• 袖がない分、覆う面積が少なく、
• 脱ぎ着もしやすい
といった点で、コートや袖ありの羽織よりも暑さを和らげやすく、シニアにとっては必要な理由といえます。
今回の羽織は、「お召」というあまり透けない生地で作られているため、着られる期間も長く、フォーマルからカジュアルまで幅広く活用できます。運よく、快適で実用的、しかもお得な長羽織に出会うことができました。
まだ暑い10月、袷着物の上にも袖無し羽織が活躍できます。
後ろに紋が入っていますが、暑さには勝てず、気にせず普段から着ています。

残った袖の活用
ベストを作ろうと思った理由
2023年10月に仕立てた長羽織の袖部分の残布は置いたままでしたが、2025年3月に入って、年齢を重ねるにつれてシルク生地の良さを実感し、「この残り布をなんとか活かしたい!」という思いが強くなり、挑戦する決心をしました。
洋裁の経験は少なく、生地の量も足りなかったものの、直線縫いだったことや、リメイク本でずっと憧れていたデザインだったことから、思い切って挑戦することにしたのです。
作り方の流れ
高橋恵美子さんの「まっすぐ手ぬいでかんたんきものリメイク」という本を参考にしました。
袖2枚を縫い合わせ、裾のレースは後で付けることにし、後で結ぶための紐は、羽織の背伏せを再利用しました。
背伏せ(せぶせ)とは、着物の背縫い部分の縫い代を覆う細い布で、裏地のない単衣の着物に使われます。この羽織にも着いていました。
袖2枚を中表に合わせ、袖口2箇所を開け、ぐし縫いし、ひたすら、周りを三つ折りにして並ぬいしていきます。
まっすぐ縫いで簡単なのに思いも寄らないデザインです。

完成したベスト
前側の銀の柄がいい位置に出ました。

後で結ぶレースリボンの代わりに背伏せ再利用。なんとか形になりました。

袖なし羽織と同じように、このベストも暑い夏に大活躍しそうです。
リメイクの楽しさと仕立てのポイント
「勿体ない」が「活用」に変わる楽しさ
年代的な変化もあり、「もう着ないけれど、手放す決心もつかない」という着物について、相談を受けることがよくあります。「もったいないけれど、どうしようもない…」と悩まれる方が多いようです。
そんな方にとって、リメイクは新たな一歩を踏み出すきっかけになります。
「手放すこと」から「活用すること」への喜び
2024年の夏、終活の一環として、着物や帯を半分以上手放しました。それはとてもつらい経験でしたが、今回のリメイクでは、反物をほぼ使い切ることができました。わずかな残布も小物に活用する予定です。
こうして仕上がったのは、和装にも洋装にも活用できる袖なしの羽織物、うれしい一着となりました。
仕立てを依頼する際や、自作するときのポイント
着物をリメイクするときは、デザインをしっかり考えたうえで、「実際に着られるもの」にすることを大切にしています。せっかく時間や手間をかけても、着られないものになってしまっては、費用が無駄になり、結局タンスにしまい込むことに…。再度、勿体ない結果に。
- 作り方が簡単で手軽に作れること
- 頭からかぶれる、ボタンが少ないなど、脱ぎ着がしやすいデザイン
- ウエストがゴムなどで調整でき、体型に合わせやすいこと
- 動く際に引っかかったり踏みつけたりしないような、安全性を重視したデザイン
このようなポイントを意識して選ぶことで、安心して依頼でき、リメイク初心者でも取り組みやすくなります。
まとめ
迷うなら試す
格安リサイクル反物をフル活用して、袖なし羽織だけでなく、残りの袖布を使ってベストも作れたのはとてもラッキーでした。
今回、リメイクが完成したばかりなので、実際に着て外出した後に、感想を改めて追加したいと思います。
実際にやってみて、寝かせておくよりもこの選択が正解だと感じています。迷うなら、まず試してみることが大切です!
体に合った着心地のよいデザインと、上質なシルクの生地が、年齢による変化も自然にカバーしてくれます。大切にしまい込まず、今こそ活かさない手はありません!
リメイクに挑戦してみたい方へ
- まずは、リメイクに関する本を図書館で借りて、気に入ったデザインを探してみましょう。
- 初心者の方は、普段使いできる簡単なものから始めるのがおすすめです。
- ミシンがなくても手縫いで十分作れますよ。
例えば、長襦袢を使ってシルクの枕カバーやシーツを作るアイデアがあります。実際に私も枕カバーを作ってみましたが、布を袋状に縫うだけで簡単に完成しました。
また、派手な色柄の着物でも、洋服にリメイクすると明るく元気な印象に変わります。ぜひ挑戦してみてください!
リメイクを再開し始めた頃、旧友から「今ある着物をどう活かせばいいか見てほしい」と相談され、さらに「祖母の大島紬を、普段使いできるワイドパンツにリメイクしてほしい」と頼まれました。その着物を手に取ったとき、染めの美しさやシルクの生地が持つ上質な風合いにあらためて心を動かされ、「リメイクを望む方々のお手伝いがしたい」と強く思うようになり記事を投稿しました。
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最後までお読みいただきありがとうございます。この記事が参考になれば嬉しいです。
着付け教室を開校しています。リメイクなどもお気軽にお問い合わせください。
袖無し羽織の詳細は下記からご覧いただけます。

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