はじめに
- 単衣着物って、季節の変わり目に迷うアイテムですよね
- 「いつから着ていいの?」「何を合わせればいいの?」と、私自身も悩んできました
- 今日は、そんな単衣について、着物歴30数年の私なりのルールをご紹介します
単衣(ひとえ)とは?
今回取り上げる「単衣着物」は、本来は袷(あわせ)着物として仕立てることもできる生地を、裏をつけずに単衣仕立てにした着物のことです。
「単衣」とは本来、仕立て方のことを指します。
けれども、実際には「着物の季節」を表す言葉としても使われることが多く、少しややこしく感じるかもしれません。
たとえば「夏着物」も裏地のない単衣仕立てですが、こちらは「薄物(うすもの)」という呼び方で区別されることが一般的です。

着物の種類と仕立て方のざっくり整理
区別の仕方 | 種類 | 特徴 |
着物の種類 | ① 袷(あわせ) | 裏地あり 主に10月〜5月に着用 |
② 単衣(ひとえ) | 裏地なし 主に6月・9月に着用 | |
③ 薄物(うすもの) | 透け感のある夏着物 7・8月向き | |
仕立て方 | ① 袷仕立て | 裏地をつけて仕立てる |
② 単衣仕立て | 基本的に裏地をつけずに仕立てる |
着物は3種類、仕立て方は2種類あります。
あまり細かく考えすぎると混乱してしまいますので、
今回は「単衣=裏地のない着物、だけど“薄物”とはまた別」というふうに、ざっくり覚えておくとよいです。
単衣のマイルール
基本的なルールを大切にしつつ、「季節や気候に合わせて、無理せず心地よく着る」です。
YouTubeなどを見ていると、着物関係の方も「気候に合わせて調整する」ことを推奨している人が多いと感じますし、最近では、昔のように厳格な衣替えを強いる人はあまり見かけません。
- 気温が25℃前後になったら単衣を意識
- ただし、透け感がない素材を選ぶようにしています(早すぎると“夏物見え”になるので)
- 例えば:
- 5月下旬〜6月頭:さらっとした生地の紬や涼し気な色合いの小紋の単衣
- 9月中旬:さらっとした生地の紬や秋の色合いの小紋の単衣
- 気温に逆らわず体感で「袷ではちょっと暑いな」と思ったら、早めに単衣へ
- 「周りとのバランス」も少し気にしつつ、自分が快適かどうかを最優先にしています
最近は温暖化の影響で、季節の感覚がずれてきています。
そのため、着物も従来の時期より一ヶ月ほど前倒ししたり、遅らせて着るのが無理なく快適です。
ただし、フォーマルな場では昔ながらの暦に従います。
この後は、私が大切にしている考え方や、実際のコーディネートのポイントについて詳しくお話ししていきます。
本来の「単衣の時期」って?
まずは、着物における「単衣の時期」の基本的なルールを知っておきましょう。
面倒に思われるかもしれませんが、季節によって装いが変わるのも、着物の楽しさのひとつです。
昔ながらの暦では、「単衣」は6月と9月に着るのが基本とされてきました。
衣替えのタイミングも、6月1日と10月1日が目安とされています。
ただ、最近の気候では、その通りにすると「6月はもう暑すぎる」「9月はまだ暑さが残っている」と感じることもあります。
単衣の着物生地について
透けない生地が中心ですが、贅沢な単衣用の生地(結城縮(ちぢみ(写真左端))というのもや雨の時期に便利なポリエステルの生地があります。
持っている袷着物を単衣に仕立て直して着ることもできます。
特に、大島紬は比較的雨にも強くサラッとした質感なのでおすすめです。
結城紬は真綿で織られふっくら柔らかいので単衣向きでは有りません。
お召しの着物は縮みやすいのでできれば避けたほうが懸命ですが、最近は撥水加工を施して着ることができます。
このように夏前は涼し気な、秋口は秋色のひとえに向く生地選んで涼しく賢く移り変わりの季節を乗り切ります。

襦袢(じゅばん)について
基本は夏襦袢
- 単衣の時期には単衣仕立ての襦袢を合わせます
- 「単衣着物+麻や絽の襦袢」が基本
- 最近は既製品の袷襦袢「き楽っく極」を使い気温や湿度で袖と衿を夏物に付け替えて使っています。
- 半衿は基本は絽塩瀬。麻素材やレースで季節感を表します。
き楽っくの衿の上からレースの半衿を貼ってつけ袖なしで着ています。



単衣の贅沢襦袢と半衿
ほんの一時期しか着用しないシボが涼し気な単衣着物向きの楊柳の長襦袢にレースの半襟をつけて5月から6月初旬に。
シボがある着物や襦袢はシボに空気が入るので通気性が良くなるそうです。見た目は涼し気ですが正絹なので麻襦袢のほうが体感的には涼しいと思います。
麻襦袢は体感温度を2度下げると言われています。確かにひんやりします。
楊柳半衿もありますが、レースのほうがおしゃれで現代的です。

帯の合わせ方
- 単衣に合わせる帯は、5月は袷用の薄手の生地の「名古屋帯」「袋帯」などですが特に暑く感じる日は「夏帯」でも良い
- 6月は涼しげな色・素材を意識、9月は少し秋らしいトーンにシフト
- 「単衣用の帯」というよりは、季節感(色目)や全体の雰囲気(見た目軽い感じ)で決めています
「単衣用の帯」という種類は説明が難しく友人に聞かれた時説明するのも大変でした。ざっくりいうと見た目に涼しく軽い感じの帯のイメージで大丈夫です。

名古屋帯
カジュアルな場には、芯の入っていない薄手の八寸名古屋帯、軽くて締めやすく、とてもおすすめです。
最近では、季節を問わず使える「オールシーズン帯」という便利な帯もあります。
1本あると、時期を気にせず使えてとても重宝します。
袋帯
最近では、季節を問わず使える「オールシーズン帯」という便利な帯もあります。
合わせ帯でも色目が明るく質感がサラッとしている感じなら使うことができます。
単衣着物には夏帯を合わせたり夏帯を合わせたりが時期的には可能です。
透け感のある帯全般
透け感のある絽や紗の帯を単衣着物に合わせても問題ありません。絽より紗のほうが夏よりな素材です。
ただし、羅のような編んだような透け感の帯は7,8月に限定したほうが無難です。
小物の合わせ方
- 帯揚げや帯締めも「涼しげな色」や「透け感」を意識
- 草履やバッグも、軽やかな印象のものを選ぶと季節感が出る
- 季節の花のモチーフなどを入れて楽しむのもおすすめ
帯揚げ
単衣着物には基本的には絽や紗、時には楊柳生地がふさわしいです。
季節感を表す大きな役割を持っています。
帯締め
単衣着物には袷用の帯締めを合わせてももんっ台ありませんが基本的には涼し気な色や幅、組み方で季節感を表します。
草履やバッグ
最近は夏草履と夏バッグという限定的な決まりは無くなりましたが他の小物と同様に涼し気な素材や色で季節感を表します。
季節の花のモチーフなど
小物の中で一番季節感を楽しめるのが季節の柄やモチーフかもしれません。
涼し気なガラスの飾りを帯留めにしたり、帯揚げも同様に季節の花のモチーフ柄を取り入れたりして物言わずとも季節感を表現できます。
イタリアンガラスの帯留めで涼しさを感じさせます。単衣紬に袷の染帯で5月の装いです。

“自由さ”を楽しめる単衣
- 単衣は「衣替えの基本を守る」と「暑さによって調節可能」のバランスが楽しめる時期
- 「暑ければ単衣着物だけ」「寒ければ上物を羽織る」くらいの自由さがあっていい
- 正解に縛られすぎず、自分が心地よい装いを大切にしています
着物を着て仕事をしていると袷の着物から単衣に変わるとなんと軽いんだと身を持って感じます。
一度、袷の着物を着てどれくらい重さがあるのか体重計で測ってみました。
なんと羽織を着た状態で3キロ有りました。着ているだけで足腰が鍛えられますね!
単衣着物はまだ測っていませんが、試してみたいと思います。
裾捌きも軽やかで、身体に沿う感触がなんとも言えず心地よいです。

まとめ:単衣の季節は、自分の感覚を大事に
最近は暑くなる時期が早まっています。
無理をして熱中症にならないように、ぜひご自身の体感に合わせて着物を選んでくださいね。
大きく季節感を外していなければ(たとえば、5月に絽の着物に絽の帯などでなければ)、あまり神経質にならなくても大丈夫です。
この記事の表なども参考に、無理のない装いを楽しんでいただけたら嬉しいです。
「きものは、季節と仲良く楽しむ、自分らしく」
そんな気持ちで、私も単衣を楽しんでいます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
着付け教室も開いておりますので、興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。
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