
着物って、流行なんて関係ないと思ってたけど…やっぱりあるのかしら?



着物は昔から変わらない日本の伝統衣装というイメージがありますし、何十年も大切に着られるものですから、「流行」とは縁がないようにも思えますが、色柄や着こなし方にも、やっぱり時代の空気ってあるものなんですよね!



でもさ、高いし…そう簡単に買い替えられるもんじゃないわよ



そうそう。最近、着物の整理もしないとって思ってたの。流行って、どう考えたらいいのかしら?



今日は、着物に関わって30年の私が、
「着物にもある流行」とどう付き合うか、
そして整理を意識する年齢になって感じたことを、実体験を交えてお話ししたいと思います。
実際には着物の世界にも“時代ごとの流行”が確かに存在していて、色柄や着こなし方、小物の合わせ方にその時代の空気感が現れているのです。
着物にも「流行」はあるんです
着物の流行は、洋服のように年ごとにガラリと変わるわけではありませんが、長い目で見れば、確実に「時代の好み」が存在しています。
たとえば、昭和の時代には、はっきりした色の対比や大胆な柄行きが人気でしたし、バブル期には華やかな訪問着や金銀の箔を使った帯が流行しました。
そして今の時代は、淡いトーンややわらかい印象の着こなし、シンプルな美しさが好まれているようです。
また、帯の結び方や小物の使い方も、昔ながらの「きっちり感」よりも、今は「こなれ感」や「抜け感」を意識したスタイルが支持される傾向にあります。
流行に合わせて買い替える?それって現実的?
とはいえ、着物は一枚一枚が高価です。
簡単に流行に合わせて買い替える…なんて、なかなかできるものではありませんよね。
私自身、若い頃に誂えた着物をいくつも持っていますし、母や親戚から譲り受けたものもたくさんあります。それらを見ていると、「今の流行とは少し違うかも」と思うこともありますが、だからといって全部手放すのはもったいない。何より、思い出や愛着が詰まっているのです。
この先も着物を楽しみたいと思うなら、「流行」よりも「今の自分が着て心地いいか」「似合っているか」を大切にしたい。そう感じるようになりました。
年齢とともに、“似合う”が変わっていく
もうひとつ実感しているのは、「年齢によって似合う色や柄が変わる」ということ。
若い頃はしっくりきていたはずの色が、なんだか顔色をくすませて見えたり…。逆に、以前は「地味すぎる」と思っていた色が、今の自分には品よく映ることもあります。
流行に関係なくても、「これは今の私には少し派手すぎるかな」とか「この色合いは、なんだか寂しい印象になるな」と感じることって、ありますよね。
だからこそ、整理のときには、「今の私に似合うか?」「これからも着たいと思えるか?」を基準にしてみるのがいいのかもしれません。
着物整理のタイミングは、“自分と向き合う時間”でもある
着物の整理を始めるタイミングは、人それぞれ。
でも、年齢を重ねて暮らしのあり方が少しずつ変化していくなかで、「着なくなった着物をどうしよう?」という悩みは、どこかのタイミングで誰しもが通る道だと思います。
この時こそ、「今の私にとって大切な着物」を選び直すチャンスです。
全部を手放す必要はありません。
今は着ないけれど取っておきたいもの、今の自分に合うもの、そしてリメイクなど新しい形で生かせるもの――。
一枚一枚と向き合いながら、自分の感覚で「残す・手放す・活かす」を考えてみる。
それだけで、気持ちもすっきりしていくように思います。
無理に流行を追わなくていい。でも、「今の自分らしさ」は大切に
着物の楽しみ方は、時代や流行に左右されすぎる必要はありません。
むしろ、自分らしさを表現できる装いだからこそ、「心がときめくかどうか」「着ていて気持ちがいいかどうか」を大切にしたいものです。
流行を取り入れるとしたら、小物などの手軽な部分からでも十分。
無理なく、今の自分に合う形で楽しむ。それが、年齢を重ねた私たちの“着物との良い関係”ではないでしょうか。
高価な着物と伝統産業のゆくえ
たしかに、今は高価な着物を買う人が減り、伝統的な織物や染色の産地は次々と縮小・廃業に追い込まれています。
私たち世代が若いころは「一生もの」として誂えることもありましたが、今の暮らし方や価値観では、なかなかそうはいきませんよね。
でも、着物を買うこと・着ること・残すことは、単なる贅沢ではなく、文化を守る行為でもあります。
「買わなければ守れない」「でも簡単に買えない」
このはざまで、多くの人が揺れているのではないでしょうか。
オシャレや美意識は、合理性を超えた“豊かさ”
合理性だけを追求すれば、着物どころか、おしゃれ全般が不要になってしまいます。
でも、私たちは服を選び、季節や気分に合わせて色を変え、ちょっとした工夫で「今日は少しいい気分」と思える。
そういう感覚こそが、“心の豊かさ”や“その人らしさ”をつくってくれているのだと思います。
着物には、まさにそのすべてが詰まっています。
理屈ではなく「美しいから」「うっとりするから」「大切にしたいから」という想い。
そこには、合理性だけでは語れない価値があります。
どう考えればいいか…答えのない問いに向き合う姿勢
この問いに「正解」はないけれど、
たとえばこう考えることはできるかもしれません。
- 無理に買わなくても、受け継いだ着物を丁寧に着てみることも、文化を守る一歩。
- 一枚の反物をリメイクして日常に取り入れることも、職人さんの技を活かす方法。
- 「着物って素敵だね」と言葉にすること、伝えることも、次の世代へのバトン。
そして何より、オシャレや美意識をあきらめずに楽しむことが、伝統を未来につなぐ原動力なのかもしれません。
おわりに
「流行っているかどうか」より、「私が着たいと思えるかどうか」。
それが、着物とこれからも長く付き合っていくためのヒントになるように思います。
整理のときも、無理に捨てる必要はありません。
一度袖を通してみて、「やっぱり好き」と思えるなら、それが答え。
手放すとしても、それは後ろ向きなことではなく、「今の私に似合うものを大切にしたい」という前向きな選択です。
着物との付き合い方に正解はありません。
年齢を重ねたからこそ見えてくる“私らしさ”を、ぜひ大切にしていきましょう。
2024年の夏に、思いきってたくさんの着物と帯を整理しました。
あとになって「やっぱり残しておけばよかったかな…」と思う着物もありましたが、
そのときは「もう今の私には似合わない」と感じていたので、やはり手放してよかったと思っています。
そのおかげで、家族の負担も少し減らすことができました。
私がもう着物に袖を通せなくなったときには、
「着物deお針子」というサービスを利用して、迷わず処分できるように、
あらかじめ家族にその方法を伝えておきたいと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
この記事が参考になれば嬉しいです。
着付け教室を開いています。ご質問や感想などございましたらお気軽にお寄せください。
コメント