【東レシルック】化繊の着物を実際に着てみた感想とメリット・デメリット

 

私が東レシルックの着物を初めて知ったのは、着付け学院で講師をしていた頃でした。

院長先生がとても素敵に着こなしていた透ける素材の夏着物を拝見し、「なんて素敵!」と思ったのですが、それが化繊の夏結城(東レシルック)だと聞いてびっくり。

それが、東レシルックの着物に興味を持つきっかけでした。

もちろん、院長先生の着付けやコーディネートが素晴らしかったからこそ、魅力的に映ったのは間違いありません。
しかし、それまで抱いていた化繊の着物のイメージが一気に払拭されました。

この記事では、実際に反物から仕立てて着てみた使用感やメリット・デメリット、気をつけるポイントなどをお伝えします。

購入を迷っている方や、化繊ってどうなんだろう?と思っている方の参考になれば嬉しいです。


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目次

結論

化繊の着物は、季節ごとに一枚は持っておくととても便利です。

袷の季節はもちろん、雨の多い時期や汗ばむ季節にも大活躍してくれます。

お値段も比較的お手頃なのに、選び方を間違わなければ、長くいろいろなシーンで楽しめるのが魅力です。

たくさん持たなくても、自分のサイズに合ったものを吟味して仕立てるほうが、結果的に長く着られて満足感も大きいと感じています。

化繊の着物について

化繊着物のランク

化繊の着物といっても、実はさまざまなランクがあります。

なぜ私がそう言えるのかというと、以前、京都の大手レンタルショップで働いていた経験があるからです。
そこで何百枚もの着物を扱い、着付けやお手入れをしてきました。その中で、化繊の着物のランクの違いを実感してきました。

  • まず、反物から仕立てる東レシルックの着物は、糸から正絹とほぼ同じ構造の糸を使って織られているため、とても滑らかな風合いです。染めも自然な色合いで、美しい仕上がりです。この着物はレンタル店では取り扱っていませんでした。
  • 次のランクの着物は、生地はそこそこ良いものの、染めの発色がやや原色で劣ります。
  • さらにその下のランクの着物になると、生地も硬く、染めの発色もあまり良くありません。
  • 一番下のランクは、生地や発色だけでなく、仕立ての質も雑なことが多いです。

もちろん、販売用の着物とレンタル用の着物では性質が異なりますが、購入にあたってはあまりに安価なものは避けたほうが無難です。

既製品はS、M、Lのサイズですが、東レシルックの反物から仕立てる場合は、自分のサイズに合わせてオーダーできるのも大きなメリットですね。

素材の種類

① ポリエステル

【特徴】

  • 現在最も一般的な化繊着物の素材。
  • シワになりにくく、型崩れしにくい。
  • 水濡れにも強く、洗濯機で洗えるものも多い。
  • 比較的安価で、柄や色が豊富。

注意点

  • 静電気が起きやすい。
  • 熱に弱く、アイロンや火に注意が必要。
  • ムレやすい(特に夏場)。

② レーヨン(人絹)

【特徴】

  • かつては化繊の着物素材としてよく使われた。
  • 吸湿性があり、肌触りがやわらかい。
  • 正絹に近い質感が楽しめる(光沢感やドレープ)。

注意点

  • 水に弱く縮みやすい。
  • 摩擦や引っ張りに弱く、破れやすい。
  • 家庭での洗濯が難しい場合が多い(ドライクリーニング推奨)。

③ アセテート・トリアセテート

【特徴】

  • レーヨンよりも耐久性がある。
  • 光沢があり、美しい発色が出やすい。
  • 絹に近い風合いを出せるものもある。

注意点

  • 摩擦に弱く、汗や水に弱い場合もある。
  • アイロン温度に注意が必要。

この3つが化繊着物の主な素材として挙げられます。私はポリエステル素材の着物しか実際に目にしたことがありませんが、最近は雨ゴートやレース素材など、化繊着物の種類もとても多様化しています購入する際には、必ずタグを確認して素材をチェックしてから選ぶのがおすすめです。

全体の特徴まとめ

  • 化繊着物は、お手入れが簡単で、雨の日や旅行にも便利。
  • 価格が手ごろで、いろいろな柄や色を楽しめる。
  • 一方で、静電気、ムレ感、熱への弱さなどには注意が必要。
  • 素材によって着心地や扱い方が大きく違うので、タグやメーカー表示をよく確認するのがおすすめです。

個人的には、袷(あわせ)の化繊着物は少し重いと感じています。単衣や夏物は蒸れやすいのですが、正絹の着物でも暑さは同じです。それならば、汗をかいても洗える化繊着物のほうが、気にせず着られるメリットはあると思います。暑さに耐えられればですが。

化繊着物にも袷、単衣、夏物(薄物)の3種類の生地があります。

帯や帯揚げ、帯締めなどの小物は正絹着物に合わせるものを使うことができます。

実際に着てみた感想


どんなシチュエーションで着たか(普段着?お出かけ?)

小紋なので、普段のお出かけや、ちょっとした買い物など、気軽な普段着として着ています。気負わず着られるのが嬉しいですね。特に天気が悪い、怪しい時は大助かりです。

袷の比較的何にでも合わせやすい松模様の小紋です。おめでたい柄なのでお正月に着ました。

袷の松模様の小紋です。おめでたい柄なのでお正月に着ました。

単衣の着物を博多紗献上半幅帯で気軽に着ました。

単衣の着物を博多紗献上半幅帯で気軽に着ました。

汗をかいても大丈夫なので浴衣としてポリの半幅帯で気軽に着ました。

汗をかいても大丈夫なので浴衣としてポリの半幅帯で気軽に着ました。

絽のような透ける素材の夏着物です。博多紗献上半幅帯で気軽なお出かけに着ました。中には麻襦袢を着ています。

絽のような透ける素材の夏着物です。博多紗献上半幅帯で気軽なお出かけに着ました。中には麻襦袢を着ています。

肌触り・着心地

袷の着物を着るときは、正絹の長襦袢を合わせているので、肌触りは心配ありません。ただ、少し重みがあるので、長時間着ていると肩に少し負担を感じるかもしれません。単衣や夏着物の場合も少し固い感じがしますがこすれて痛いなど全く問題ありません。

動きやすさ・扱いやすさ

裾さばきなどの動きやすさは正絹とほとんど同じで、普段使いにぴったりです。特に扱いやすさは抜群で、汚れが落ちやすく、シワにもなりにくいのが助かります。ただし、化繊なので火には注意が必要です。以前、レンタル着物を借りたお客様がタバコで穴を開けてしまったことがあり、とてもショックでした。

見た目(光沢感・柄の出方など)

東レシルックは、見た目の光沢や柄の出方も正絹とほとんど変わらないと思います。遠目には、正絹と見分けがつかないくらい自然です。柄の出方も、特に気になる違いは感じません。

季節感(暑い・寒い)

夏の単衣はやっぱり暑いですね。私は下に涼しい肌着を着て、できるだけ快適に過ごせるように工夫しています。袷を冬に着るときですが、個人的には正絹でも寒い日は寒いので、特別に化繊だから寒いとは感じていません。ただ、触ると少しひんやりした感触があります。

化繊のメリット

洗濯やお手入れのしやすさ

化繊は正絹に比べて圧倒的にお手入れが楽です。自宅で手洗い(もしくはネットに入れて)で洗えるので、汗をかいたり汚れたりしても気軽に洗えます。干すときは直射日光を避け、陰干しします。しわになりにくいので、普段のお手入れはきれいな布でほこりを払うくらいで十分です。

価格の手ごろさ


東レシルックで反物で仕立てる場合は正絹よりはお手頃価格ですが仕立て代は別途かかります。
最初は高いと思うかもしれませんが、価値ある一枚になる方が結果的にお得です。

雨の日でも安心ですが、天候やシーンをあまり選ばず晴れの日も充分楽しめます。

色や柄が豊富

東レシルックで人気の色や柄

【人気の色】

淡いピンクや桜色

春の訪れを感じさせる優しい色味で、特に女性らしい雰囲気を楽しめます。小紋や付け下げでも人気があります。

グレー系・ベージュ系

落ち着いたトーンでどんな帯や小物にも合わせやすく、普段着からお出かけ着まで幅広く使えます。年齢を問わず着られる色味です。

単衣のベージュ系の変形格子の着物は帯を変えることで夏前の単衣から秋口にも、一枚で着て浴衣と大活躍です。

水色・ブルー系

夏に爽やかさを演出できる色として人気。上品な印象で涼しげに見えるので単衣や夏物にもよく選ばれます。

チェックのブルー系の単衣着物は洋装の中に混じってもスッキリとして好印象でした。洋服感覚で楽しめて重宝しています。

赤やエンジ系

アクセントカラーとして人気。お正月やお祝いの席にも映える華やかさがあります。

深緑やモスグリーン

大人っぽい落ち着きがあり、秋冬にもぴったり。帯や小物で季節感を演出しやすいのが魅力です。

私の袷着物は年齢的にもこの色目です。長い期間帯や小物を替えて楽しめます。

【人気の柄】

小花柄(小紋柄)

普段着やお稽古着として使いやすく、幅広い年代に人気です。帯合わせで印象を変えやすいのも魅力。

更紗(サラサ)柄

異国情緒あふれる唐草模様や花模様が特徴。大人の遊び心を感じさせるので、おしゃれさんに人気があります。

夏らしく透け感のある着物に、モノトーンの草花柄をあしらうことで、見た目も涼し気に感じられました。レストランに出かけたときも、その柔らかな雰囲気を楽しめました。

四季の花柄

桜・梅・菊・桔梗など、季節感を取り入れた柄は一年を通して楽しめるので定番人気です。

吉祥柄(松竹梅・宝尽くしなど)

お正月やお祝いの場面にも使いやすく、少しかしこまった席にも安心です。

抽象柄・モダン柄

シンプルな幾何学模様や縞(ストライプ)、ドット柄など、現代的でコーディネートが楽しい柄も増えています。年齢問わず使いやすいので幅広く選ばれています。

【まとめ】

東レシルックは、

使いやすいベーシックカラー(グレー、ベージュ、ブルーなど)

季節感を楽しめる花柄

着こなしを楽しむモダン柄

が特に人気です。

しわになりにくい など

ポリエステル繊維の特性(形状記憶性・弾力性)

高密度な織り方と加工

撥水・防汚加工

湿気を含みにくく復元力が高い

といった要素が揃っているからなんです。

化繊のデメリット

静電気

確かに静電気は起きやすいですが、まとわりついて困ったことはありません。正絹でも天候や個人差によって静電気が起きるので、特別に化繊だけの問題とは感じません。もし気になる場合は、静電気防止スプレーを使うと対策しやすいです。

ムレやすい

特に夏場はムレ感が出やすいと感じます。汗をかきやすい方や湿気が気になる季節には、吸湿性の高い肌着や汗取りインナーを活用すると快適です。長時間の外出時や、人が多い場所(電車や観劇など)では特に蒸れやすいので、ちょっとした着付けの工夫(伊達締めや帯板をを夏用にする)や小さな保冷剤や扇風機があると安心です。

帯板はたかはしきもの工房のすだれ帯板です。前帯の下に汗をかかなくなりました。

メッシュの伊達締めとすだれ帯板の写真

高級感

やはり、正絹に比べると化繊は光沢感やしっとりした質感は少ないかもしれません。ただし、着付けをきちんと整えれば十分きれいに見えます。むしろ、きちんとした着付けができていれば、正絹であっても着崩れてしまうより、化繊のほうがすっきりして見えることもあります。

熱に弱い

化繊は熱に弱いため、アイロンをかけるときには注意が必要です。普段はあまりシワになりにくいのでアイロンをかける機会は少ないですが、必要な場合は必ず当て布を使って低温でかけると安心です。ちなみに、アイロン台の上で霧吹きを少し使ってから当て布をしてかけると失敗しにくいです。

独特のツルツル感

ポリエステル特有のツルツルした肌触りが苦手な方もいます。ただ、サイズが合っていれば着付けで困ることはほとんどないと思います。自分サイズで仕立てれば着心地も良くなるので、反物からマイサイズで誂えるのがおすすめです。

こんな人には化繊(東レシルック)がおすすめ!

着物初心者さん

最初の一枚としては価格も手頃で、お手入れも簡単なので安心です。ただ、本当に着物をしっかり楽しみたいなら、自分のサイズに合わせて仕立ててもらうのが近道。東レシルックの反物を選んで、自分サイズで誂えると着付けの練習もしやすく、上達も早いですよ。

雨の日のお出かけが多い人

化繊は雨の日でも気軽に着られるので便利です。ただし、大雨の日にコートなしで外を歩くと、やはり見た目が心配。雨コートや羽織を合わせると、より安心でおしゃれです。

洗濯の頻度が多い人

汗をかきやすい方や、着物をたくさん着たい方にはとても便利!ただし、化繊にも生地のランクがあります。安価すぎるものは縫い目がほつれやすかったり、生地が弱ったりすることもあるので、しっかりした品質のものを選んでくださいね。

いろんな柄を気軽に楽しみたい人

おしゃれ着として柄物をたくさん揃えたいなら、化繊はコスパ抜群です。ただし、あれこれ買い集めるよりは、しっかりした品質の一枚を仕立てて、帯や小物でコーディネートを楽しむ方が長く着られて満足度も高いですよ。


まとめ

実際に着てみた率直な感想

私は化繊は東レシルックの着物しか仕立てていませんが、特に雨の日やプライベートで気軽に楽しむときには単衣着物をよく着ます。単衣は着る時期が長く、浴衣としても着回せるのでとても重宝しています。

私の持ち物はこんな感じです:

袷着物:1枚

単衣着物:2枚

夏着物:2枚(そのうちの1枚は着すぎて裾が擦り切れて処分しました)

合わせ襦袢:2枚

単衣襦袢:1枚

絽目襦袢:2枚

そのほかに、いただきものの夏着物や既製品の羽織も持っています。どれも便利で、TPOに合わせて使い分けています。帯は正絹の帯も締めますし、化繊の半幅帯もよく使っています。

全体的に、東レシルックの着物は高品質でとても扱いやすくて便利だと感じています。

メリット・デメリットを簡潔に振り返ると

東レシルック着物のメリットは何と言っても汚れても洗える点です。雨の日に平安神宮の夜桜見物に行ったときには足元が土で足袋も着物の裾もドロドロでした。それでも、何度もこすり洗いしても生地が傷まずきれいに落ちました。

デメリットは少し重いところと夏場は蒸れて暑いところです。(夏は何を着ても暑いので肌着を工夫することが大事です)

読者へのメッセージ

「着物ってハードルが高い」と感じている方も多いかもしれません。でも、東レシルックのような化繊着物なら、お手入れが楽でお値段も手頃。雨の日やたくさん洗いたいときにも気軽に着られるので、着物ライフをもっと楽しめます。

普段着やお稽古着として取り入れたり、好きな柄を気軽に楽しんだり…いろんなシーンで活躍してくれる化繊着物も、着物ライフの大きな味方です。

ぜひ、「着物ライフを気軽に楽しむ選択肢」として、化繊着物も検討してみてくださいね。

最後までお読みいただきありがとうございました。この記事が参考になれば嬉しいです。

着付け教室も開いていますので、体験レッスンをご希望の方はぜひお気軽にお問い合わせください♪

ヘビロテしすぎて裾が擦り切れてしまったポリの夏着物です。

ヘビロテしすぎて裾が擦り切れてしまったポリの夏着物です。

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