昨年、私がSNSに載せた芭蕉布の着物姿を見た友人から連絡がありました。
「麻の着物が欲しくて見に行ったら、デパートで400万円くらいする宮古上布があって驚いたの。何がいいと思う?」
友人は私と同じ70代。お能を観たり、知人との食事や集まりに着物で出かけたりしている人です。
別に宮古上布に惹かれたわけではなく、参考までに見た価格に驚いたという話でした。
私は少し考えて、こう答えました。
「私なら、そこまで高価格のものでなくても、まず自分で手入れしやすい気楽なものを選ぶかな」
そう答えながら、ふと思ったのです。
実は私自身、これまで逆のことをしていました。
高いものほど、しまい込んでいた
以前購入していた芭蕉布があります。
高価なものだから大事にしまっておきたい気持ちがあって、長いあいだ、ほとんど袖を通さずにいました。
「汗をかいて汚れたらどうしよう」
「お手入れに失敗したら取り返しがつかない」
そんなふうに考えてしまうと、ただでさえ夏着物は着る機会が限られるのに、さらに出かけるハードルが上がってしまいます。
高価な着物ほど、出番が減っていく。
これは皮肉なことですが、私自身がずっとそうしてきたことでした。
一度袖を通して、考えが変わった
去年、ふと思い立って6月に芭蕉布を着て、真夏仕様の羅の帯を合わせて出かけたことがあります。
風が抜けて、とても気持ちが良かったのです。
しまっておくだけでは分からなかった心地よさが、そこにありました。
その心地よさが忘れられず、今年も6月末、夏越の祓に着て出かけました。
もちろん浴衣のように素肌ではなく、汗取り肌着を着て、その上に麻の襦袢をしっかり入れて汗対策をしています。
時期としては少し早いと思う方もいるかもしれません。
それでも最近の暑さを考えると、自分の心地よさを優先してもいいのではないかと思いました。
実際、歩いていると暑いくらいでした。
あと何回この着物に袖を通せるだろう。
そう考えるようになってから、以前手に入れたものは、しまって眺めるより、体感温度に合わせて着て楽しむ方を選びたいと思うようになりました。
ちなみに、着物インフルエンサーの山崎陽子さんも、Instagramで6月に宮古上布をお召しになっていました。近年の暑さもあり、従来の季節感だけではなく、その時の気候や自分の心地よさに合わせて楽しむ着方をしても良いのかもしれません。


だからこそ、これから選ぶなら気軽な一枚を
高価なものほど大切に着てこそ価値がある。それは身をもって分かりました。
だからこそ、これから新しく夏着物を選ぶなら、最初から「気軽に袖を通せるもの」を選んだ方がいいと思うようになりました。
しまい込んでから気づくより、最初から出番の多い一枚を選ぶ方が、結局は豊かな時間につながるからです。
こちらは、私が購入して何度も着ている小千谷縮です。
麻着物なので、着るたびに自分で洗って手入れをしてきました。そのため、少し色が薄くなってきています。
でも、それだけ繰り返し袖を通してきたということでもあります。
帯を変えながら楽しみ、その時々の予定に合わせて着てきました。

シニアにはあえて、少し明るい色がいいかと!
博多紗献上帯は小千谷縮にぴったりの帯です。
こんな涼しげな帯留めをポイントに。
コーディネートでコスパよくいくらでも楽しむことができます。
友人には、まずは小千谷縮くらいの気軽さから考えてもいいのでは、と話しました。
理由は単純です。
- 見た目に十分涼しげ
- お手入れを考えやすい
- 着る心理的ハードルが低い
- 出番が増える
※小千谷縮にもさまざまな価格帯があり、手績み・手織りのものになると十分高価で、工芸品として大切にされる世界があります。今回お伝えしたかったのは、価格そのものではなく、自分が気軽に着られて、お手入れもしやすく、実際に出番が増える一枚を選ぶという考え方です。同じ麻着物でも、暮らし方や着る頻度によって心地よい選択は変わると思っています。
70代の着物は”管理できる枚数”がちょうどいい
若い頃は、あれも素敵、これも欲しいと思っていました。
でも今は少し考え方が変わりました。
一枚増えると、収納も増える。手入れも増える。気持ちの負担も少し増える。
シニアになると、体力だけではなく、気持ちの余裕も大事です。
だから私は最近、
「持てる枚数」ではなく、
「続けられる枚数」
を意識しています。
まとめ|次に着る日が楽しみになる着物を選びたい
着物の価値は値段だけでは決まりません。
また着たいと思えるか。
汗をかいても自分で簡単にお手入れできるか。
外出に負担にならないか。
私は、そんな基準で夏着物を選びたいと思っています。
高価な着物を否定するつもりはありません。むしろ、大切にしまっておいた芭蕉布に袖を通して、その心地よさに気づけたことは、私にとって大きな学びでした。
ただ、その経験があるからこそ言えるのは、高価でも気軽でも、結局は「着てこそ」価値があるということです。
私たち世代には、気持ちも手間暇もなるべく軽くして、気軽に袖を通せる一枚が案外いちばん豊かな選択なのかもしれません。
実際、夏越の祓に行った日は曇り空で風も爽やかでしたが、帰宅後にこの記事を書いている時点でも疲れを感じていました。
最後までお読み頂きありがとうございます。この記事が参考になれば嬉しいです。
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