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エルメスのガウンが名古屋帯に!30年眠った洋服が着物の帯として生まれ変わった話

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エルメスのガウンが名古屋帯に!30年眠った洋服が着物の帯として生まれ変わった話

タンスの奥に、「使わないけど捨てられない」洋服はありませんか?

私にはありました。バブルの時代に買った、エルメスのシルクガウンです。

なんとそれが、30年以上の時を経て、名古屋帯に生まれ変わりました。そしてその帯が、思わぬ形で人の心を動かすことになったのです。

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目次

なぜ買ったのか

1980〜90年代、海外ブランドが全盛期だったあの頃。シャネル、エルメス…どれも憧れの的でした。

私は30代、3人の息子たちの子育て真っ最中。夫の実家に同居し、他府県から嫁いで知り合いもほとんどいない日々。

そんなストレスのはけ口だったのか、幼稚園のママ友と一緒にブランドのセールや福袋に走り回っていました。そこで出会ったのが、このシルクのガウンでした。何とも言えない光沢と色目、そしてセール価格。気づけばレジに並んでいました。

でも帰宅してから気がついたのです。「こんな高価なガウン、私のどこで着るの?」

30年間、心に引っかかり続けた後悔

シルクのガウンを着るような生活は、私にはありませんでした。

ガウンはタンスの奥へ。時が経つにつれ少しずつ記憶の底に沈んでいきましたが、「あのお金、もったいなかったな」という気持ちはずっと残っていました。捨てることもできず、かといって使うこともできず。そんな宙ぶらりんの状態が、30年以上続いていたのです。

和裁の先生との出会いが、すべてを変えた

転機は、着物の袖丈直しがしたくて和裁教室を探したことでした。知り合いの悉皆屋さんに相談したところ、『京都に着物姿を増やす会』主催の和裁教室を紹介していただきました。

最初は部分直しを学ぶだけのつもりでしたが、実際に着物を着る人の視点からの提案が新鮮で、気づけば夢中になっていました。八掛の取り換えや襦袢の裾直しも習得し、「自分でお直しできる」という喜びがどんどん広がっていきました。

その後、教室が借りていた部屋が使えなくなり閉鎖の危機に。そこで我が家の一室を教室として提供することになりました。先生と生徒3人、少人数ならではの和やかな雰囲気の中で、自宅だからこそ思い立ったらすぐ実践できる環境になりました。

「ガウンを帯にできないか」という相談

ある日、教室の雑談の中で「着物地から帯を作りたい」という話題になりました。そのとき、ふと思い出したのです。タンスの奥のあのガウンのことを。

「これ、帯にできませんか?」

先生は生地を確かめ、一言おっしゃいました。「できますよ」

その言葉で、30年越しのガウンがついに日の目を見ることになりました。

完帯成した帯
完帯成した帯

リメイクの工程

ガウンをほどき、名古屋帯の寸法を見積もって裁断。お太鼓部分と胴に巻く部分の長さが足りない箇所は、手縫いでハギ合わせ。帯芯を入れて、丁寧に仕立てていきました。

心配だったのは、継ぎ目が目立たないか、薄い生地が帯の引っ張りに耐えられるか、帯芯との相性はどうか、という3点でした。でも完成してみると、すべての不安が杞憂でした。

生地の継ぎ目のアップ
象の左の生地の継ぎ目のアップ

女性の下、継ぎ目が目立ちにくくなっている
女性の下、継ぎ目が目立ちにくくなっている

運良く直線の柄に紛れて継ぎ目が目立ちにくくなっていてラッキーでした。

完成!すべてクリア

さすがエルメス、と思いました。見た目は薄くても、実際には肉厚でしっかりとした生地。継ぎ目は模様のおかげで目立たず、背中のお太鼓部分に隠れる位置に。帯芯との相性も良く、たるみもありません。

普通の帯と同じように巻いて締めても、まったく問題なし。どんな着物にも合わせやすい万能な帯になりました。30年間タンスで眠っていたガウンが、ようやく「使える一本」に生まれ変わったのです。

名古屋帯のお太鼓柄です
名古屋帯のお太鼓柄です

エルメスの生地だからこそできた

エルメスの生地には「ブラタク糸」というブラジル産の高品質な絹糸が使われているそうです。染めたときの発色が美しく顔映りが良くなること、そして着心地が良く肌になじむこと。だからこそ、帯にしても美しい光沢が保たれたのだと思います。後日、エルメスのスカーフで帯を作っている方がいると聞いて「やっぱり!」と納得しました。

メーカーさんからお聞きしたのですが、高級な着物や襦袢、帯などの生地も「ブラタク糸」で作るそうです。

その帯が、お客様の心を動かした

完成した帯を締めて、着付け講師として催事のお手伝いに出かけました。

するとその次の催事に、以前お会いしたお客様がふたたびいらっしゃいました。

「エルメスの帯を締めてた先生ですよね?」

覚えていてくださったのです。そのお二人は、その日、私の見立てを信頼してくださり、着物のセットをそれぞれお任せでお買い上げいただきました。即決でした。

帯一本が、信頼を生んでいたのです。

あのとき躊躇せずに「できますか?」と相談してよかった。30年間タンスで眠っていたガウンが、こんな形で誰かの心を動かすとは思ってもみませんでした。

紅花紬に締めた写真
紅花紬に締めた写真

まとめ|眠っている洋服が、帯になるかもしれない

もしご自宅に「高かったのに使っていない洋服」「捨てられないけど出番がないシルクのスカーフやガウン」があれば、一度リメイクを考えてみてください。

上質なシルクの洋服は、着物の帯としての素質を十分に持っています。ただし、ガウンを帯にするには和裁の知識と経験が必要です。思い切って相談できる先生を見つけることが、一番の近道です。

箪笥の中で眠っているものが、日の目を見る日がきっと来ます。着付けやリメイクのご相談は、お気軽にお問い合わせください。

息子とランチに行った帰りに寄ったお寺での帯写真
息子とランチに行った帰りに寄ったお寺での帯写真
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